無口な人魚姫と粗暴な海賊
 ミーシャの返答にパールはコクリと頷き、部屋の隅に置いてある椅子を指差した。


「椅子がどうか致しましたか?もしかして不備が……?」


 パールが首をブンブンと横にふる。

 ピンク色の長い髪が左右に揺れ、水面が穏やかに波打つ。


 話した方が伝わるのはわかっている。

 しかし、怖かった。


 『ミーシャが疲れるてしまうから、椅子を持ってきて座って話して欲しい。』


 たったこれだけのことなのに、言葉にならない。

 喉の奥まで出かかっているのに、まるでつっかえたようだった。


 余計なことではないか。

 私なんかに言われても迷惑なのではないか。


 今までの経験からパールはそんなことばかり、ぐるぐると考えてしまう。

 自身を否定してきた言葉など、忘れていいと思う。

 しかし、一度言われた言葉はそう簡単には消えてくれない。

 心に刺さり続けて、膿んで、血を流し続けている。

 それでも、パールはそれを止める術も、癒す方法も分からなかった。


 苦しくなりそうな心は見ないふりをして、ドクドクと少し早く脈打つ心臓を落ち着かせるように、両手をぎゅっとして胸の前で握る。


 左手はそのまま、胸元に置いたまま右手で椅子を指す。

 手招きをするような仕草をすると、ミーシャがほんの少しハッとしたような表情を浮かべた。
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