無口な人魚姫と粗暴な海賊
 パールが夢中になっていたところに、ダリオスが部屋のノックもせずにドカドカと部屋にやってきた。

 しかし、パールが住んでいた海中ではドアという物が存在しない。

 ノックをして入るという文化がそもそもないため、ダリオスがたとえ無遠慮にパールの部屋に入ってきたとしても、パールが気にする事はなかった。


 ダリオスはパールに近づくと、視線を合わせるようにしゃが見込む。

 パールの澄んだ空色の瞳に、ダリオスの顔が映り込んだ。


「アンタが気に入ってくれたなら、買ってきたかいがあったな。」


 そう言うとダリオスは、楽しそうに遊ぶパールの頭をわしゃわしゃと撫で回した。

 愛らしい飼い犬を撫でるかのように、それはもうわしゃわしゃと撫でる。

 一通りパールの頭を撫で回して満足したのか、パールの頭からダリオスの手が離れた瞬間。

 ダリオスは大声で笑いだした。


「あははははっっっっ!アンタの頭、酷いことになってるぞ。」


 酷い頭とはなんだとパールがバスタブの隣にかけられている鏡を見ると、そこには鳥の巣のようにもじゃもじゃとした自分の頭が映っていた。

 さっきまで自分の髪はこんなにボッサボサにはなっていなかった。

 犯人はただ一人。

 パールのの頭をわしゃわしゃと撫で回し、そこで大笑いをしている男しかいない。
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