夜を繋いで君と行く
Prologue
夜に隠してほしい、人生だった。
光に手を伸ばしてみても、それは決して私の手の中にとどまることはなく。

だからきっと、あの夜に私の名前を呼んだのが彼でなければ、私は今も夜の中をたった一人でいるのだろう。

「怜花」と、少し圧のある低い声で呼んだ夜。
「怜花?」と、探るような、揺れるような声で瞳を覗き込みながら言った夜。
「怜花」と、真っ直ぐな声に捉えられて逃げ場を失った夜。

たくさんの夜をあなたと繋いで、私は今こうしてあなたの隣にいる。
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