夜を繋いで君と行く
『…大事にしてちょうだい、本当に。怜花ちゃんにだけご飯を作らせたり、休みだからって家事を全部押し付けたら怒りますから。休み明け、全部怜花ちゃんに聞いて確認しますからね?』
「はい。頑張ります。」
『じゃあ一旦ここは引いてあげますけど、電話番号はちゃんと送るのよ、怜花ちゃん。』
「えっとあの…」
『絶対に送ること。じゃないと1週間強制休みにしますからね。迷惑をかけたくない、仕事に早く復帰したいと思うなら、大人しくしてちゃんと3食食べて9時には寝なさい。わかった?』
「…わかりました。」
『じゃあ彼氏くん、くれぐれもよろしくね。ちゃんと一緒に、頑張りなさい。』
「はい。」
残った電子音。怜花は後ろを振り返り、少しだけ律を睨んだ。
「あー…なに、怒ってる?」
「だって、わざわざ叱られにいったでしょ?」
「あ、そっち?出しゃばるなってことかと…。」
「全部自分のせいって言うから、…叱られちゃうよそんなの。」
怜花は律の胸にトンと頭を預けた。八幡は曲がったことも、人を大切にしないことも大嫌いな性格だ。
「…叱られたいんだよ、俺は。あと、見張っててほしいのかも。ちゃんとできてるか。会ったことないけど、八幡サンにはなんか、怜花のこと大事にしてる雰囲気を感じた。俺への怒りも、言ってること全部、まともだと思ったし。実際彼女を1か月くらい放置してたわけじゃん?そりゃ大事にしてないって思われるし、休むことを推奨されるくらい弱らせたのも彼氏は何やってんの、もしかしてDV?ってなってもまぁ変じゃないよ。」
「…私だって律のこと、放置したよ。」
不安に揺れる瞳を作ったのも、結果として傷を残してしまったのも自分の方だと怜花は思う。伸ばそうとした手を断ち切られる怖さを、律に残した。
ごめんなさいと言って許しを乞いたい気持ちもある。ただ、それはあまりにも卑怯に思えた。律は謝られたら許してしまう。だけど…
(律を傷つけたことを、私は自分の傷にしなくちゃいけない…と思う。)
『4度目のお泊まり会』がないかもしれないと言った律の表情が、目に焼き付いている。その人が本当に自分を大切に想っていてくれたとき、その人から逃げることは自分だけではなく、相手のことも丸ごと傷つける。昨日から怜花を見つめる律の瞳に揺らぎが見えるのは、律にある傷が痛むからなのだろう。
「はい。頑張ります。」
『じゃあ一旦ここは引いてあげますけど、電話番号はちゃんと送るのよ、怜花ちゃん。』
「えっとあの…」
『絶対に送ること。じゃないと1週間強制休みにしますからね。迷惑をかけたくない、仕事に早く復帰したいと思うなら、大人しくしてちゃんと3食食べて9時には寝なさい。わかった?』
「…わかりました。」
『じゃあ彼氏くん、くれぐれもよろしくね。ちゃんと一緒に、頑張りなさい。』
「はい。」
残った電子音。怜花は後ろを振り返り、少しだけ律を睨んだ。
「あー…なに、怒ってる?」
「だって、わざわざ叱られにいったでしょ?」
「あ、そっち?出しゃばるなってことかと…。」
「全部自分のせいって言うから、…叱られちゃうよそんなの。」
怜花は律の胸にトンと頭を預けた。八幡は曲がったことも、人を大切にしないことも大嫌いな性格だ。
「…叱られたいんだよ、俺は。あと、見張っててほしいのかも。ちゃんとできてるか。会ったことないけど、八幡サンにはなんか、怜花のこと大事にしてる雰囲気を感じた。俺への怒りも、言ってること全部、まともだと思ったし。実際彼女を1か月くらい放置してたわけじゃん?そりゃ大事にしてないって思われるし、休むことを推奨されるくらい弱らせたのも彼氏は何やってんの、もしかしてDV?ってなってもまぁ変じゃないよ。」
「…私だって律のこと、放置したよ。」
不安に揺れる瞳を作ったのも、結果として傷を残してしまったのも自分の方だと怜花は思う。伸ばそうとした手を断ち切られる怖さを、律に残した。
ごめんなさいと言って許しを乞いたい気持ちもある。ただ、それはあまりにも卑怯に思えた。律は謝られたら許してしまう。だけど…
(律を傷つけたことを、私は自分の傷にしなくちゃいけない…と思う。)
『4度目のお泊まり会』がないかもしれないと言った律の表情が、目に焼き付いている。その人が本当に自分を大切に想っていてくれたとき、その人から逃げることは自分だけではなく、相手のことも丸ごと傷つける。昨日から怜花を見つめる律の瞳に揺らぎが見えるのは、律にある傷が痛むからなのだろう。