夜を繋いで君と行く
* * *

「ごめん、時間がかかって…!」
「え、全然?わ、何?誕生日の気合…?」
「ち、違うよ!律と出かけるからの気合であって、自分の誕生日だからってわけじゃ…。」
「俺と出かけるから可愛くしてくれたの?」
「可愛くっていうか、かっこよくした…と思ってたんだけど…?」
「あ、綺麗めってこと?まぁ綺麗でもあるけど、頑張りも全部含めたら可愛いになっちゃうよ、俺は。」
「あてにならない…!」
「そーです、何聞かれても可愛いしか言わない可能性大だから。んじゃ行こっか。」
「あ、えっと、あの、今日ちょっとヒール高いの履いても大丈夫、かな?」
「うん。好きなの履いて。」
「ありがと…。」

 怜花はほっと胸を撫でおろす。怜花は165センチほどの身長がある。ヒールのある靴を履くと170センチを越えてしまう。前に一度見下ろされるのが好きじゃないと言われたことがあり、それを上手く忘れられなかった怜花は律の前でもあまりヒールの高い靴を履くことはなかった。しかし今日の服装やメイクには少しヒールのあるものの方が見栄えもいいはずだ。律の隣を歩いて万が一撮られてしまったとしても律の面目は保たれる程度の見た目にはどうしてもしておきたかった。

「…元彼の呪いが根強い~…。」
「ご、ごめん…律がそんなちっちゃいこと気にする人だと思ってるわけじゃないんだけど…。でもほら、女には小さくいてほしい人も多いから…。」
「怜花が2メートルで、俺なんか眼中に入らないとしてもジャンプしまくって視界に入れてもらおうとするんで。まぁあのなんか鋭すぎてグラグラしそうな靴はやめてほしいけど、それ以外なら何でもいいよ。」
「グラグラしそうって…ピンヒールかな。」
「そういう名前なの?」
「ヒールの部分が細くて刺さりそうな感じのやつ。」
「そう。なんかどっかのライブで履いてる同じ事務所の声優いたけど危ないなってしか思えなかったから、あれはなんか怪我されても怖いから嫌。」
「さすがに持ってないよ、あんなのは。というかそんなにたくさん持ってるわけじゃないんだけど、今日のこれは私が持ってる中で一番ヒールが高いかなって。」
「そうなんだ。履いてみて。どのくらいの身長差になるかな。もしかしていつもより顔近い感じ?」

 先に靴を履いた律がわくわくした顔で振り返る。怜花がパンプスを履いて律の隣に立つと、いつもよりも確かに律の顔を近くに感じた。
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