夜を繋いで君と行く
* * *
土日で完全復帰し、平日の業務を怜花は滞りなくこなし、今日の夜に律の家に行くと約束をしていた。そんな金曜の朝、始業時間前に珍しく怜花のスマートフォンが長めに震えた。相手を確認すると『九重』だった。九重は律のマネージャーである。回復してからしていた電話で律に、『緊急連絡先を怜花にしてもいいか』と問われ、了承していた。しかし、こんなに早く使われることなんて想像もしていなかったため、少し緊張しながらも通話のアイコンをタップした。
「も、もしもし。一橋です。」
『あーお噂はかねがね、九重と申します。怜花さん、つかぬことをお聞きしますが二階堂さんと会う予定って今日明日でありましたかね?』
「え、えっと…。」
会ったことも話したこともない相手からいきなりこんなプライベートなことを話されるとは思っていなかったため、怜花は返答に詰まった。
『あぁ、いきなりすみません。ちょっと二階堂さん、発熱しちゃって。』
「は、発熱ですか?」
『あー…やっぱり話してませんでしたか。そういう人なんですよね、二階堂さんって。ケロッとした顔して収録こなしてたけど実は熱出てましたとか、本人無自覚でやり切った後に事務所でぶっ倒れるとか、結構ありましてね、過去に。』
「あの、今二階堂はどこに…?」
『別の者に車を出させて、病院に行かせています。僕はスケジュールの調整とかをしてまして。それで、病院が終わりましたら家まで送り届けるところまではやれそうなんですけど、その後のケアまではさすがにこちらで手が回らなくて、怜花さんに連絡をした次第です。』
「そうでしたか…。ご連絡いただきありがとうございます。スケジュール調整などの対応まで、ありがとうございます。午後には二階堂の家に向かえるようにしますが、それで間に合いますか?」
『充分ですが、怜花さんの仕事は大丈夫ですか?』
「あ、はい。こちらはどうとでもなります。他に何かやるべきことなどはありますか?」
『いえ、二階堂さんのケアを行っていただけるのであればそれが一番ありがたいというか…早期回復していただかないと、回復後に仕事量が大爆発、みたいなことになりかねないので。』
「そ、そうですよね。承知いたしました。」
一時的にスケジュールを変更したところで、代わりがいるわけではないのであればそれは後の律に降りかかってくるだけだ。だらだらと療養させるわけにはいかない。発熱時にいい食事は何だったかな、などと考えている怜花の耳には九重の声が届く。
『…二階堂さんが緊急連絡先にあなたを、と言った意味が分かった気がします。』
「え?」
『いつか事務所に来てくださいね。二階堂さんのマネージャーとして一度、お会いしたいので。二階堂さん、ケチなので写真すら見せてくれなくて、謎の美女ってことになってますから、怜花さん。』
「えっ…え!?」
『二階堂さんが家に着いたらまた連絡します。アドレスも頂戴していますので、メールで連絡いたします。』
「は、はい!よろしくお願いします。」
思わぬ緊急事態に、怜花は気合を入れるため、両頬をぱちんと叩いた。
土日で完全復帰し、平日の業務を怜花は滞りなくこなし、今日の夜に律の家に行くと約束をしていた。そんな金曜の朝、始業時間前に珍しく怜花のスマートフォンが長めに震えた。相手を確認すると『九重』だった。九重は律のマネージャーである。回復してからしていた電話で律に、『緊急連絡先を怜花にしてもいいか』と問われ、了承していた。しかし、こんなに早く使われることなんて想像もしていなかったため、少し緊張しながらも通話のアイコンをタップした。
「も、もしもし。一橋です。」
『あーお噂はかねがね、九重と申します。怜花さん、つかぬことをお聞きしますが二階堂さんと会う予定って今日明日でありましたかね?』
「え、えっと…。」
会ったことも話したこともない相手からいきなりこんなプライベートなことを話されるとは思っていなかったため、怜花は返答に詰まった。
『あぁ、いきなりすみません。ちょっと二階堂さん、発熱しちゃって。』
「は、発熱ですか?」
『あー…やっぱり話してませんでしたか。そういう人なんですよね、二階堂さんって。ケロッとした顔して収録こなしてたけど実は熱出てましたとか、本人無自覚でやり切った後に事務所でぶっ倒れるとか、結構ありましてね、過去に。』
「あの、今二階堂はどこに…?」
『別の者に車を出させて、病院に行かせています。僕はスケジュールの調整とかをしてまして。それで、病院が終わりましたら家まで送り届けるところまではやれそうなんですけど、その後のケアまではさすがにこちらで手が回らなくて、怜花さんに連絡をした次第です。』
「そうでしたか…。ご連絡いただきありがとうございます。スケジュール調整などの対応まで、ありがとうございます。午後には二階堂の家に向かえるようにしますが、それで間に合いますか?」
『充分ですが、怜花さんの仕事は大丈夫ですか?』
「あ、はい。こちらはどうとでもなります。他に何かやるべきことなどはありますか?」
『いえ、二階堂さんのケアを行っていただけるのであればそれが一番ありがたいというか…早期回復していただかないと、回復後に仕事量が大爆発、みたいなことになりかねないので。』
「そ、そうですよね。承知いたしました。」
一時的にスケジュールを変更したところで、代わりがいるわけではないのであればそれは後の律に降りかかってくるだけだ。だらだらと療養させるわけにはいかない。発熱時にいい食事は何だったかな、などと考えている怜花の耳には九重の声が届く。
『…二階堂さんが緊急連絡先にあなたを、と言った意味が分かった気がします。』
「え?」
『いつか事務所に来てくださいね。二階堂さんのマネージャーとして一度、お会いしたいので。二階堂さん、ケチなので写真すら見せてくれなくて、謎の美女ってことになってますから、怜花さん。』
「えっ…え!?」
『二階堂さんが家に着いたらまた連絡します。アドレスも頂戴していますので、メールで連絡いたします。』
「は、はい!よろしくお願いします。」
思わぬ緊急事態に、怜花は気合を入れるため、両頬をぱちんと叩いた。


