夜を繋いで君と行く
「ん?」
律が振り返ったの同時に、怜花はパッと手を離した。
「ご…ごめんっ…あの…ちが…ごほっ…げほげほっ…。」
「こらこら、一気に焦って大きい声出すと咳出るよ。…落ち着いて。」
ふわりと律の香りが近付いた。ただそっと律の手が、トントンと呼吸を整えるためだけに怜花の背に触れた。そしてその手は優しく怜花の頭を撫でた。
「…寂しいのは、俺だけじゃなかった?」
律の表情がよく見えなかった。視界が滲んで、瞬きをしてようやく律が困ったように微笑んでいたことに気付く。マスクが濡れる。
「…怜花に泣かれたら置いて帰れないからさ。連れて帰っちゃうぞー。」
怜花は首を横に振った。それだけは決してさせてはならない。本当は引き留めてもダメなのだから。
「大丈夫…ごめん、引き留めて…。」
「大丈夫じゃないのに大丈夫ってすぐ言うからなぁ、怜花は。」
「……。」
反論できなかった。大丈夫な時が自分にあったのかも疑わしいくらいには、『大丈夫』を取り繕って生きてきた気がする。精神的に大丈夫かどうかではなく、この人は一人でも大丈夫なのだと思わせることをずっと優先してきたのだから。
「…一緒に居た時間が楽しくて幸せでさ、ちょっと寂しかったよね、この2週間。…ちょっとじゃないかな、かなり。」
怜花は静かに頷いた。弱い自分がぼろぼろ出てきて嫌になる。しかし、気持ちを隠すことは律の顔を曇らせることだと知ってしまったから、それはできない。結局弱い自分をさらけ出すしかなくなってしまう。
「今週末一緒に居られなくても、怜花が治ったら平日でも来てくれたっていいし、いっそ住んじゃってくれてもいいんだよ。あ、でも寂しさ回避のための電話!今怜花が安心してやれることで、怜花が心細くならないことを探そう。」
再び頷いた。また涙がこぼれ落ちる。体調が悪いときはいつもよりも心が弱っていてよくない。
「…こんな時に不謹慎だけど、寂しいって気持ちもついに一緒になって、また俺が嬉しくなっちゃってんだよなぁ…。帰り道にやけそう。…フラッシュバックする、袖引かれたの。可愛すぎじゃん…?」
全部言葉にされて、怜花の耳が熱くなる。怜花は律の背を押した。
「あ、涙止まった?よしよし、その調子。怜花、すぐご飯食べてね。車乗ったら怜花が昼食べてるかチェックするための電話するから、スマホ置いておいて。…じゃ、また明日顔見に来ます。」
パタンとドアが閉まった。怜花は自分の耳に触れた。その熱さが、律がここにいたことの証明だった。
律が振り返ったの同時に、怜花はパッと手を離した。
「ご…ごめんっ…あの…ちが…ごほっ…げほげほっ…。」
「こらこら、一気に焦って大きい声出すと咳出るよ。…落ち着いて。」
ふわりと律の香りが近付いた。ただそっと律の手が、トントンと呼吸を整えるためだけに怜花の背に触れた。そしてその手は優しく怜花の頭を撫でた。
「…寂しいのは、俺だけじゃなかった?」
律の表情がよく見えなかった。視界が滲んで、瞬きをしてようやく律が困ったように微笑んでいたことに気付く。マスクが濡れる。
「…怜花に泣かれたら置いて帰れないからさ。連れて帰っちゃうぞー。」
怜花は首を横に振った。それだけは決してさせてはならない。本当は引き留めてもダメなのだから。
「大丈夫…ごめん、引き留めて…。」
「大丈夫じゃないのに大丈夫ってすぐ言うからなぁ、怜花は。」
「……。」
反論できなかった。大丈夫な時が自分にあったのかも疑わしいくらいには、『大丈夫』を取り繕って生きてきた気がする。精神的に大丈夫かどうかではなく、この人は一人でも大丈夫なのだと思わせることをずっと優先してきたのだから。
「…一緒に居た時間が楽しくて幸せでさ、ちょっと寂しかったよね、この2週間。…ちょっとじゃないかな、かなり。」
怜花は静かに頷いた。弱い自分がぼろぼろ出てきて嫌になる。しかし、気持ちを隠すことは律の顔を曇らせることだと知ってしまったから、それはできない。結局弱い自分をさらけ出すしかなくなってしまう。
「今週末一緒に居られなくても、怜花が治ったら平日でも来てくれたっていいし、いっそ住んじゃってくれてもいいんだよ。あ、でも寂しさ回避のための電話!今怜花が安心してやれることで、怜花が心細くならないことを探そう。」
再び頷いた。また涙がこぼれ落ちる。体調が悪いときはいつもよりも心が弱っていてよくない。
「…こんな時に不謹慎だけど、寂しいって気持ちもついに一緒になって、また俺が嬉しくなっちゃってんだよなぁ…。帰り道にやけそう。…フラッシュバックする、袖引かれたの。可愛すぎじゃん…?」
全部言葉にされて、怜花の耳が熱くなる。怜花は律の背を押した。
「あ、涙止まった?よしよし、その調子。怜花、すぐご飯食べてね。車乗ったら怜花が昼食べてるかチェックするための電話するから、スマホ置いておいて。…じゃ、また明日顔見に来ます。」
パタンとドアが閉まった。怜花は自分の耳に触れた。その熱さが、律がここにいたことの証明だった。