夜を繋いで君と行く
* * *

 病院というのは常に混んでいて好きじゃない、そんなことしか思い浮かばない程度には頭はぼうっとしていた。発熱までしてしまったのは良くなかった。関係各所への迷惑もあるし、怜花に会える日はさらに遠のいてしまう。

「…はぁ…。」

 会計を終え、病院を出ようとすると入口から少し離れたところに九重が立っていた。

「随分と弱ってますね。そんな二階堂さんに朗報です。怜花さんが来てくれますよ。」
「は…?え、何?怜花に連絡したの?」
「緊急連絡先ですから。」
「…待って待って。そんなの頼んでないじゃん。」
「頼まれてませんけど、緊急時ですから連絡しますよね。病院が混んでいたおかげで二階堂さんが先に家に着くか、怜花さんが先に着くかくらいになるかもしれませんけど。車乗ってください。スケジュール調整が終わったんで、帰りは僕が担当します。」

 行きは九重が送ってくれたわけではなかった。九重は朝から律のスケジュール調整に奔走していた。代わりに手が空いていた別のスタッフが病院まで送ってくれた。朝、なんだか頭がぼんやりするなと思いながら一度事務所に寄ったが、動きがどうやら変だったらしい。九重に熱を測れと言われ、言われるがままに測ったら38度6分をたたき出し、病院送りだった。

「あ、怜花さんからメールが来てますね…。本当に状況の飲み込みが早くて聡明な方です。こちらとしては大変助かります。」
「…何だって?」
「上司が早めに出ていいって言ってくださったそうです。もう会社を出ていて、色々買い揃えてから向かうとのことですね。…あの、二階堂さん、電話でもして状況を説明したらどうですか?」
「…怒られるかなぁ…。」
「まぁとりあえず乗ってください。電話なら車内でもできます。」
「…うん。迎え、ありがとう。」
「いえいえ。」

 九重に促され、後部座席に乗り込んだ。関節が痛い。ずっと寒くて、時々体の奥が震える。背もたれに体重を預けて、ふぅっとゆっくり息を吐く。

(はぁー…怜花に仕事休ませてこっちに向かってもらうとか…迷惑極まりないじゃん。俺は看病なんか、ちゃんとしてあげたことないのに。)

 ただ出来合いのものを届けて、顔を見て自分が安心したかっただけ。そんな1週間前を思い出すとため息しか出ない。また深く呼吸をすると、手元にあった律のスマートフォンが震えた。
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