夜を繋いで君と行く
* * *

 色々買い揃えていたら思いのほか時間がかかってしまった。律から貰ったカードキーで部屋のドアを開けると律の靴があった。つまり、律はすでに帰宅している。怜花は手を洗い、動きやすいスウェットに着替えた。本当はシャワーを浴びた方がいいのだろうが、まずは一刻も早く律の様子を確認したかった。
 食材を冷蔵庫にしまってから、怜花は律の寝室に足を踏み入れた。

「…れ…か…?」
「ごめん、起こした?」
「…あー…ううん。なんかぼーっとしてた。」
「おでこ、触るよ?」
「うん。」

 怜花の知っている律の額の温度ではなかった。38度はなかなかに辛い。去年インフルエンザにかかったときに、それは痛感していた。

「…ちょっとしんどいね、これは…。」
「…うん。」
「水分補給はしてる?」
「…なんか、飲んだっけ…?」
「…わかった。まずは水分補給ね。食欲はある?」
「…あんま、ない。」
「麺とかならまだマシかな?」
「…多分。怜花のご飯は、食べたい。」
「うん。ちょっとでいいから食べて、薬飲んで寝ちゃおう。まずは水分ね。あったかさは丁度いい?寒い?」
「…なんか、ずっと寒い。」
「んー…じゃああったかいものにしようかな、飲み物。ちょっと待っててね。」
「…怜花。」
「ん?何?」
「…迷惑かけて、ごめん。」

 怜花は苦笑した。きっと今の律は1週間前の怜花と同じ気持ちなのだろう。相手の負担になる自分が嫌で、負担は迷惑であるという変換しかできない。気持ちはわかる。でも、そうではないのだ。

「心配だから、顔を見に来たんだよ私も。律と同じでしょう?とりあえず白湯飲んで、一旦落ち着こう。私、ちゃんとずっとここにいるから、律は余計なこと考えないで休んで、早く回復してね。じゃないと仕事が大爆発って九重さん、言ってたし。」

 怜花は律の布団を首元まで上げてかけ直した。そして手の甲で少しだけ、律の頬に触れた。

「…熱高いなぁ。頑張りすぎてたから、疲れがどっと出ちゃったかな。…もう大丈夫だからね。律は自分のことに集中。他のことは私に任せて。ね?」

 何も言わずただ頷いた律をそのまま残して怜花は寝室を出た。
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