夜を繋いで君と行く
* * *

「…起きた?」
「ん…。」

 律が目を覚ました。時間は夕方5時を過ぎていた。怜花はそっと頬に触れた。

「顔色は悪くないね。ほっぺの熱さも、最初よりはかなり落ち着いたかな。薬の効果といえばそうだから、明日の朝までは治ったかわかんないなぁ。」
「…もうちょっと…。」
「うん。」
「触っててもらっても…いい?」

 怜花は一度、少しだけ目を丸くしたがすぐに頷いた。

「いいよ。私の手が冷たいから、ちょっと気持ちいいでしょ?」
「…それもあるけど、怜花に近くにいてほしいだけ。…いつもより。」
「…わかった。じゃあちょっと先に水分補給しよう。起き上がれる?」
「うん。」

 怜花は体を起こそうとする律の背を支えた。少し視界はぼんやりした様子だが、背中に触れた感じからもピーク時の熱よりは下がっていそうだ。

「飲み物持ってくるから、背もたれに体重預けててね。」
「うん。」

 怜花はグラス1杯分のポカリを持ってすぐに戻った。律に手渡すと、律は喉が渇いていたのかすぐに飲み干した。

「結構汗かいてるね。だから熱も下がったのかも。治ってる治ってる。昼、ちゃんと食べたしね。はい、グラスもらうよ。」
「うん、ありがとう。」

 怜花は受け取ったグラスをテーブルに置くと、律の近くに座った。そしてそのまま、ゆっくりと抱きしめた。

「怜花っ…今汗でべたべたで…!」
「そんなのどうでもいいよ。…もうちょっと、近くにいてほしいんでしょ?」
「…それは、そうなんだけど…。」
「近くにいるよ。これでわかるでしょう。…落ち着ける?安心できる?私が近くにいる意味は、ちゃんとある?」

 律の手がゆっくりと怜花の背中に回った。体重を預けられると、少しだけ重い。それでもその重さは体重だけではなく、律がずっと一人で抱えていたものの重さだと思うから、今はできる限りで抱きしめ返したかった。

「…意味しかないよ。…こういう時って、ごめんねよりありがとうの方が言われて嬉しいのに、先にごめんねが出てきそうになる…。」
「ふふ、わかるよ。嬉しいのにね、いることも心配してくれることも。」
「うん。でも…。」
「自分なんかに、その価値はない。…そう思うから、ごめんなさいが出てきちゃうんだよね。でも私は律のピンチに駆けつけてこれる私でよかったって今は思う。…先週律が2日間とも来てくれたの、嬉しかったから。だから、寂しいのも不安なのも、そういう気持ちがあってそれが私がいることで解消されるなら、…ここに来てもいい私になれたことは、よかったって思ってるよ。」

 そう言って怜花は、ポンポンと軽く律の背を叩いた。深いため息がマスク越しに、怜花の耳元で聞こえた。
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