夜を繋いで君と行く
* * *

「やだなぁ…怜花いるのに、一人で寝るんでしょ?」
「…私にうつって共倒れになるわけにはいかないからね。」

 一緒に眠れないのはそれだけが理由ではなかった。少し腹部が痛むなと思っていたら、生理がきていた。万が一のことがあってベッドを汚してしまってはいけないと思うとしばらく一緒に眠ることはできそうにない。久しぶりに生理が来たことで、律に話していなかったことをまた一つ思い出し、それを話さなくてはならないことを思うと胸の奥が痛むが、今はそんな自分の憂鬱よりも律の安心の方が優先だ。

「…こんな距離にいるのに、一緒に寝れないんだ…。」

 夕飯を食べ終え、薬も飲み、順調に熱が下がってきている律は少しずついつもの調子を取り戻しつつある。とはいえ油断は禁物だ。

「まだそれを言うの?もー!」
「…なんか、複雑。熱出さなかったら怜花の凄いところ、さらに知ることはなかったかもだけど、熱出てなかったらこのまま一緒に寝ていちゃいちゃできてたのかって思うと…。」
「いつでもできることだよ、治ったら。」
「…いつでもじゃないじゃん。家同じじゃないし、俺の仕事が不規則だから、休みがいつでも合うわけじゃないし。」

 今日はまるで駄々っ子のようだった。いつもはここまで聞き分けのない子のようなことは言わない。『住んでくれてもいい』と言っていた律の言葉を疑っているわけではないが、そこまで甘えていいのかという躊躇いと、一緒に住めばこういう場面では律の助けにすぐなれるかもしれないという可能性の狭間に立っているような気がする。近くにいたくないわけではない。ただ、一緒に住むとなると関係性は一つ、また進んでしまう。話していないことがある中で関係性を進めるのはきっと、フェアじゃない。

「…ごめん、困らせるようなこと言った。」
「困ってるっていうよりは、…揺れてる、ずっと。でもこの話は律の熱が下がって元気になってからね。」
「…ん、わかった。」

 怜花は律の布団をかけ直す。額に手を当てて熱を確認すると、少し熱いが微熱程度までは下がってきているようだった。

「…なんか、枕カバーとかいい匂いする。あとシーツが、…ふかふか?」
「律がソファで寝てる間に洗って乾燥機かけたからね。」
「…すごいね、なんか。生活力が違いすぎる。…怜花とずっと一緒に居られる人って幸せだなぁって、今日は一日中思ってた。」
「い、一日中?」
「…うん。ずっと優しい音がする。温かい空気と、優しい匂いもあって、…これがずっと続いたらいいのにって。」
「…ずっと具合悪いのは嫌だよ。」
「そこは、うん。すぐ治すよ。…今日ずっといてくれてありがとう。…治ったらいちゃいちゃは解禁?」
「…んー…とりあえず、一生懸命寝て食べて治してください。電気消すよ。」
「うん。」

 律の頬に少しだけ触れる。そして怜花は静かに呟いた。

「おやすみ。」
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