夜を繋いで君と行く
「で、でも…私は…律の願いを叶えられないかもしれないんだけど…。」
「俺の願いは怜花がいることで、それ以外は大体譲れるよ。…声優は、ちょっと譲れないか。でも怜花と仕事以外のことは、希望することはあっても、それが叶えられなかったとしてそれが人生の後悔になるようなことはない。その程度の望みしかないよ。…というかさ、痛みはどうしたらいいの?なんか普通に喋ってるように見えるんだけど…。」
 
 律の視線がおろおろし出す。怜花の腹部を見つめたり、怜花の顔色を窺ったりと急に不安そうな顔になってしまった。

「…お腹と背中がしばらくは痛いのと、さっきも言ったけど出血量がとんでもない。」
「そんなにすごいの?死んじゃわない?」
「いや、本当にね…死ぬのかなって思うくらいなんだけど、死なないんだよね、これが。」
「そんな呑気なこと言ってないでさ!死んだら困るとかいうレベルじゃないんだから!何?何なら俺にもできるの?冷やすの?あっためるの?」

 ちょっとしたパニック状態の律に、怜花は小さく微笑んだ。昨日までは心配する側だった自分が、今日は急に心配される側になっている。しかも、自分の状態は病気ではないのに。

「あっためたほうがいいって聞くけど、別に普段からお腹は冷やしてないんだよ。」
「そうかもしれないけどさぁ。てか昨日頑張りすぎだったんじゃないの?無茶してたでしょ。」
「昨日はそんなに痛くなかったんだって。時々あ、痛いかも?くらいで。今日は昨日の5倍くらい痛い。」
「痛みが日替わりなの!?」
「日替わりなの。」
「わっかんない…怖い…そんな意味不明な感じなのに病気じゃないの?…人間の体怖すぎ。本当に痛みも何もかもがわかんないから、全部言って。してほしいこと。昨日怜花が俺のしてほしいこと全部してくれたじゃん。俺もう回復してるし、やれるよ、なんでも。」

 急に重病人のように扱われて、怜花は目を丸くした。しかし必死な律に『大丈夫だよ』と言っても聞いてもらえない気がする。ここはできるけれどちょっと辛いかも、と思うようなことをお願いして律の心配を少し減らしてあげたい。

「…じゃあ、フレンチトースト食べたいな。作れるようになった?」
「た、多分!フレンチトーストはいける気がする。」
「やった。じゃあフレンチトースト、お願いします。」
「…ソファで横になってていいからさ、なんとなく指示飛ばしてもらってもいい?」
「ふふ、いいよ。」
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