夜を繋いで君と行く
「何年も会ってないし忘れたいのに、体とか心が弱ると思い出しちゃうんだよね。元彼もだけど、家族のことも…なんか、何がダメだったのかなぁ私のって思うとのまれちゃうっていうか…。だから律にも自信のない態度、取り続けちゃってるんだと思う。」
「…自信なくても、ずっと頑張ってるよ怜花。」
「…頑張るしか、できないから。」
「それは実はちゃんとすごいことなので、怜花ちゃんはよーく頑張ってます。よしよし。」
律が子供をなだめるように怜花の頭を撫でた。不思議な感覚だった。『いい子だね』と言われ、頭を撫でてもらうなんてことは初めてだったのかもしれない。経験したことのない温かさと不思議な気持ちが渦巻いて怜花はそっと目を閉じた。
「…律の温度は私を現実に戻してくれるから、…最近は前よりも減ったよ。眠れない夜も、思い出すことも。…いつも助かってる。ありがとう。」
律の鼓動と呼吸の音だけに耳を澄ませると、今は心が落ち着いた。顔を見られていない、そして顔が見えないからかもしれない。近い距離で真正面から向き合ってしまうと、どうしても照れて鼓動が早くなってしまうから。
「…怜花も同じだからね。怜花のご飯できたよ~も同じ威力あるから。あれ、時々めちゃくちゃ泣きそうになる。」
「え、えぇ!?なんで?」
「…そういうこと、言われないで育ってきたからかなぁ。」
時折欠片のように落ちていた、律の家族の話。いつか話してくれたら聞く気でいたが、今なら少しだけ押せるかもしれないと思い、怜花は口を開いた。
「みんな、忙しかった?」
「ううん。専業主婦だったよ、母親は。でも、いつも父親にビビっててあったかい空気じゃなかったんだよね、あの家。だから、怜花と初めてうちでご飯食べた時、驚いた。温かいご飯を温かい空気で、それを家で食べるのってこんな感じなんだって。味も美味しかったけど、それだけじゃないんだよね、多分。同じ空間にいるってそういうことだけじゃない。…怜花と外でご飯食べてたときも楽しかったけど、うちで食べた時かなやっぱり。…なんか、この人は違うのかもしれないなって思ったのは。」
初めて語られる家族の話が、知らないことなのに知っていることのように聞こえるのは、自分にも経験があるからなのかもしれない。温かい空気はない場所で食事をした経験なら、怜花にもあった。母親は父親にビビっていたわけではないため、ピリッとした空気ではなかったかもしれないけれど、少なくとも二度と帰りたくない空気であることに違いはなかった。
「…自信なくても、ずっと頑張ってるよ怜花。」
「…頑張るしか、できないから。」
「それは実はちゃんとすごいことなので、怜花ちゃんはよーく頑張ってます。よしよし。」
律が子供をなだめるように怜花の頭を撫でた。不思議な感覚だった。『いい子だね』と言われ、頭を撫でてもらうなんてことは初めてだったのかもしれない。経験したことのない温かさと不思議な気持ちが渦巻いて怜花はそっと目を閉じた。
「…律の温度は私を現実に戻してくれるから、…最近は前よりも減ったよ。眠れない夜も、思い出すことも。…いつも助かってる。ありがとう。」
律の鼓動と呼吸の音だけに耳を澄ませると、今は心が落ち着いた。顔を見られていない、そして顔が見えないからかもしれない。近い距離で真正面から向き合ってしまうと、どうしても照れて鼓動が早くなってしまうから。
「…怜花も同じだからね。怜花のご飯できたよ~も同じ威力あるから。あれ、時々めちゃくちゃ泣きそうになる。」
「え、えぇ!?なんで?」
「…そういうこと、言われないで育ってきたからかなぁ。」
時折欠片のように落ちていた、律の家族の話。いつか話してくれたら聞く気でいたが、今なら少しだけ押せるかもしれないと思い、怜花は口を開いた。
「みんな、忙しかった?」
「ううん。専業主婦だったよ、母親は。でも、いつも父親にビビっててあったかい空気じゃなかったんだよね、あの家。だから、怜花と初めてうちでご飯食べた時、驚いた。温かいご飯を温かい空気で、それを家で食べるのってこんな感じなんだって。味も美味しかったけど、それだけじゃないんだよね、多分。同じ空間にいるってそういうことだけじゃない。…怜花と外でご飯食べてたときも楽しかったけど、うちで食べた時かなやっぱり。…なんか、この人は違うのかもしれないなって思ったのは。」
初めて語られる家族の話が、知らないことなのに知っていることのように聞こえるのは、自分にも経験があるからなのかもしれない。温かい空気はない場所で食事をした経験なら、怜花にもあった。母親は父親にビビっていたわけではないため、ピリッとした空気ではなかったかもしれないけれど、少なくとも二度と帰りたくない空気であることに違いはなかった。