夜を繋いで君と行く
* * *
トリュフの箱を片付け、歯磨きをして、いつもならそろそろ寝ようかとどちらからともなく言い出す流れなのに、それをしないまま23時を過ぎた。適当につけたテレビの音だけが救いだ。無言をほどよくかき消してくれる。
少し距離を詰めれば触れることのできる距離に座っているものの、怜花の方からはもうこれ以上距離を詰められないでいた。
(…覚悟は、してきた。怖くはない。…けど、何て言って切り出したらいいかわからない…。)
里依が三澄のところに泊まる話が出た時に、可愛い下着を選びに行った。怜花は里依の付き添い程度についていったが、一人で買うのも恥ずかしいから一緒に買おうとせがまれて、必要性もないのに2セットも買った。使わないまましまっていたそれを持ち出してきた程度には心を決めてきたし、過去にもっていた男に対する嫌悪感をもってここに座っているわけでもない。ただ、緊張感だけが今自分の体を支配していて、心臓がびりびりと痛い。
「…怜花。」
「は、はいっ!」
思わず上ずった怜花の声に、律はふふと小さく笑った。そして律の大きな手が怜花の髪に触れ、そのまま頬に伸びてきた。
「…緊張させてるね、ずっと。」
「…ごめん…あの、こればっかりは…今すごく…。」
「うん。」
「信じられないくらいの速さで鳴ってて、心臓が。」
「…うん。俺も。期待と緊張と、俺で大丈夫かなっていう不安と、…でもやっぱり全部欲しいなっていうわがままで、うるさいかも。」
律がそっと怜花を抱き寄せた。丁度律の心臓の近くに耳が当たるような位置で抱きしめられたため、その鼓動の速さはダイレクトに伝わってきた。
「…うるさいでしょ。」
「律も緊張するの?」
「するよ。…下手で嫌われたくないってのもあるし、痛い思いも怖い思いもさせたくないし。」
「…上手い下手で言ったら…もっと緊張するよ。だって…。」
「うん。」
「…きっと上手にできたことなんて、一度もなかったんだと思うから。」
体を重ねた経験だけがあって、それが成功体験だったのかと問われればその答えは出ない。気持ち良いと思えれば成功なのだとしたら、その経験は皆無だった。相手にこうしてくれと言われたことも、してあげたこともあっても、それが良かったと言われたことはない。
流れも仕組みもわかる。でも、何が正解で正しくて、相手のためになるのかはずっとわからない。
トリュフの箱を片付け、歯磨きをして、いつもならそろそろ寝ようかとどちらからともなく言い出す流れなのに、それをしないまま23時を過ぎた。適当につけたテレビの音だけが救いだ。無言をほどよくかき消してくれる。
少し距離を詰めれば触れることのできる距離に座っているものの、怜花の方からはもうこれ以上距離を詰められないでいた。
(…覚悟は、してきた。怖くはない。…けど、何て言って切り出したらいいかわからない…。)
里依が三澄のところに泊まる話が出た時に、可愛い下着を選びに行った。怜花は里依の付き添い程度についていったが、一人で買うのも恥ずかしいから一緒に買おうとせがまれて、必要性もないのに2セットも買った。使わないまましまっていたそれを持ち出してきた程度には心を決めてきたし、過去にもっていた男に対する嫌悪感をもってここに座っているわけでもない。ただ、緊張感だけが今自分の体を支配していて、心臓がびりびりと痛い。
「…怜花。」
「は、はいっ!」
思わず上ずった怜花の声に、律はふふと小さく笑った。そして律の大きな手が怜花の髪に触れ、そのまま頬に伸びてきた。
「…緊張させてるね、ずっと。」
「…ごめん…あの、こればっかりは…今すごく…。」
「うん。」
「信じられないくらいの速さで鳴ってて、心臓が。」
「…うん。俺も。期待と緊張と、俺で大丈夫かなっていう不安と、…でもやっぱり全部欲しいなっていうわがままで、うるさいかも。」
律がそっと怜花を抱き寄せた。丁度律の心臓の近くに耳が当たるような位置で抱きしめられたため、その鼓動の速さはダイレクトに伝わってきた。
「…うるさいでしょ。」
「律も緊張するの?」
「するよ。…下手で嫌われたくないってのもあるし、痛い思いも怖い思いもさせたくないし。」
「…上手い下手で言ったら…もっと緊張するよ。だって…。」
「うん。」
「…きっと上手にできたことなんて、一度もなかったんだと思うから。」
体を重ねた経験だけがあって、それが成功体験だったのかと問われればその答えは出ない。気持ち良いと思えれば成功なのだとしたら、その経験は皆無だった。相手にこうしてくれと言われたことも、してあげたこともあっても、それが良かったと言われたことはない。
流れも仕組みもわかる。でも、何が正解で正しくて、相手のためになるのかはずっとわからない。