夜を繋いで君と行く
* * *

 そっとベッドに降ろされ、怜花の視線は泳いだ。いつもならばそのまま布団にくるまるところだが、今日それをやってしまったら律は『やっぱり無理をしていた』ととるだろう。
 怜花を降ろした律はといえば、ベッドの真ん中で胡坐をかいていた。

「怜花、こっち来てー」

 呼ばれると安心する。怜花は律の前まで来ると、ゆっくりと視線を上に上げた。

「何にも見えないのは困るけど、全部見えたら怜花、恥ずかしさで困っちゃうでしょ?」

 怜花は静かに頷いた。

「…律は困んないの?」
「俺は別に。」
「な、なんで…?」
「見られることへの羞恥心が薄いから、かなぁ。そもそも自分が怜花のどんな顔も逃さないように必死になってるだろうから、自分が見られてるなーなんて気持ち、どっかにいかない?」
「…わ、わかんない。相手の表情を逃したくないって思ったこと…ない、から…。」
「俺もないよ。でも今日は、一つも取りこぼしたくない。…全部ちょうだい。」

 怜花の唇にいつものような優しいキスが落ちてきた。このまま激しいものに変わるのかと思えばそんなことはなく、唇をついばんでは離れ、頬に瞼にとただキスが降り注いだ。恥ずかしさで目が開けられなくなった怜花は、ひとしきり終わったことを感じて目を開けた。

「サイドランプだけつけよっか。」
「…なるべく、暗くしてくれる?」
「うん。このくらいでどう?」
「…大丈夫。」
「…うん、見える見える。」

 またそっと、律の唇が怜花の額に触れた。律の指が触れても唇が触れても、熱が上がっている気がする。そんな自分が恥ずかしくて、ますます耳が熱い。

「…あ、の…。」
「うん。」
「ふ、服は自分で…脱げばいいの…かな…?」
「あれ、なんかいきなり乗り気になった?」
「…恥ずかしさがすごいから、一思いにって…思ったのと…あと、その…こんなに時間をかけてもらったことがないから…どうしたらいいか…正解がわからなくて…。」

 服ははぎ取られるもので、下着は投げ捨てられるものだった。部屋の明るさ一つ確認されたことなどないし、緊張をほぐすための優しい触れ合いがあったこともない。だからこの時間をどういう風に過ごせばいいのか、経験から正解をたたき出せない。
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