夜を繋いで君と行く
「…その、トイレに行った時に誰かと電話している星宮ゆりあに出くわして…えっと…あの、その、ちょっとまだ、律に迷惑を掛けそうなことを話していた、ので…我慢ができなくて、…出過ぎたことを言ってます、多分。」
「それは具体的には何と仰ったのか、聞いても良い内容なんですか?」
「え?」
それを話すために口を開いているのに、そこを聞かれるとは思わなかった怜花は顔を上げた。九重はまっすぐに怜花を見つめていた。
「いやほら、たとえば『二階堂には私っていう彼女がいるんで!』みたいな女同士のバトルになってたら聞けないじゃないですか、そんなの。あまりにもプライベートすぎますし。」
「そ、そんなことは言ってません!」
「言ってもよかったけどね。『お前なんか私の足元にも及ばない』くらいは言ってもよかったんじゃない?」
「律!」
律がとんでもないことを言うものだから、怜花は律の腕を軽く叩いた。そんな姿を眺めながら、九重は口元を緩めている。
「ああ、それもいいですね!実際足元どころかどこにも及んでませんからね、彼女は。…それで、なんと仰ったのか、聞いても良いのでしたらお聞きしたいです。」
怜花は再び、拳を握り直した。その拳の上に律の手が優しく乗った。今日の律の手はわずかに温度があった。
「そんなに力入れないの。俺も九重くんも、怜花のこと怒るとかないから。九重くんが怒ったら俺がキレるし。」
「二階堂さんの不機嫌って面倒なので、嫌ですね。そして怜花さん、本当に全く怒るとかそういうつもりは僕にはありませんし、そのような立場ではありませんので、気軽にさくっとお話しください。」
二人の言葉に、手の力が緩む。そしてゆっくりと、怜花は言葉を紡いだ。あの場面を、言ってしまったことを脳裏に浮かべながら。
「…可愛いだけではだめだって、言いました。」
「それで、星宮ゆりあは何と?」
「多分、あっけに取られてたんだと思います。…言い返されること自体、想定していなかったんだと思いますし。言いすぎたと思って、謝ってその場を後にしました。」
「…言い返す言葉が、見つからなかったんでしょ。『可愛い』を免罪符に生きてる人にさ、怜花みたいな『可愛い』人が『可愛い』を武器にしないで生きてるところを見せつけちゃったわけだしね、今日。」
怜花の肩に律がとん、と少しだけもたれた。
「かーっこいいねぇ、怜花は。これが彼女側の気持ちってやつ?」
「二階堂さん、押せ押せのイケメン系ヒロインに愛されるタイプのオーディション、受けたいんですか?」
「んー全然?でもこれはかっこよすぎ。だって絶対、その一言だけじゃないよ、怜花が言ったのって。」
「それは具体的には何と仰ったのか、聞いても良い内容なんですか?」
「え?」
それを話すために口を開いているのに、そこを聞かれるとは思わなかった怜花は顔を上げた。九重はまっすぐに怜花を見つめていた。
「いやほら、たとえば『二階堂には私っていう彼女がいるんで!』みたいな女同士のバトルになってたら聞けないじゃないですか、そんなの。あまりにもプライベートすぎますし。」
「そ、そんなことは言ってません!」
「言ってもよかったけどね。『お前なんか私の足元にも及ばない』くらいは言ってもよかったんじゃない?」
「律!」
律がとんでもないことを言うものだから、怜花は律の腕を軽く叩いた。そんな姿を眺めながら、九重は口元を緩めている。
「ああ、それもいいですね!実際足元どころかどこにも及んでませんからね、彼女は。…それで、なんと仰ったのか、聞いても良いのでしたらお聞きしたいです。」
怜花は再び、拳を握り直した。その拳の上に律の手が優しく乗った。今日の律の手はわずかに温度があった。
「そんなに力入れないの。俺も九重くんも、怜花のこと怒るとかないから。九重くんが怒ったら俺がキレるし。」
「二階堂さんの不機嫌って面倒なので、嫌ですね。そして怜花さん、本当に全く怒るとかそういうつもりは僕にはありませんし、そのような立場ではありませんので、気軽にさくっとお話しください。」
二人の言葉に、手の力が緩む。そしてゆっくりと、怜花は言葉を紡いだ。あの場面を、言ってしまったことを脳裏に浮かべながら。
「…可愛いだけではだめだって、言いました。」
「それで、星宮ゆりあは何と?」
「多分、あっけに取られてたんだと思います。…言い返されること自体、想定していなかったんだと思いますし。言いすぎたと思って、謝ってその場を後にしました。」
「…言い返す言葉が、見つからなかったんでしょ。『可愛い』を免罪符に生きてる人にさ、怜花みたいな『可愛い』人が『可愛い』を武器にしないで生きてるところを見せつけちゃったわけだしね、今日。」
怜花の肩に律がとん、と少しだけもたれた。
「かーっこいいねぇ、怜花は。これが彼女側の気持ちってやつ?」
「二階堂さん、押せ押せのイケメン系ヒロインに愛されるタイプのオーディション、受けたいんですか?」
「んー全然?でもこれはかっこよすぎ。だって絶対、その一言だけじゃないよ、怜花が言ったのって。」