夜を繋いで君と行く
「理由なんて、お姉ちゃんの嫌がらせとしか……!」
「先に嫌がらせをしたのはどっち?」
尖った声が怜花の背後からした。思わず振り返ると、律が今まで見た中で一番冷たい顔をして、言葉を発していた。
「どうも。怜花の嫌がらせなんていう、聞き捨てならない言葉が出てきたので黙っていられなかったよ。どうも、君がどうしても会いたい怜花の『大切な人』です。」
ここで『律』と名前を呼ぶことは憚られた。亜衣花に律の名前を知られてはならない。そんな気持ちが怜花の唇を結ばせた。代わりに律の服を少しだけ引くと『ん、何?』といつもの調子で返ってくるものだから怜花は首を横に振った。
「あー、黙んないよ、この件に関しては。前言撤回してくれませんかね?怜花は君に嫌がらせなんかしていない。君がしてきたことがここに来て戻ってきた。たったそれだけだと認めてくれます?」
「な、何のこと……ですか?」
律が出てきた瞬間に、甘えた声に変わった。その声に怜花の体がわずかに震える。律は怜花を抱きしめる腕にゆっくりと力を入れて、いつものように肩に顎を軽く乗せた。
「そういうの、僕には通用しません。怜花を悪く言うのをやめて、怜花の話、ちゃんと聞いてください。ごめん怜花、割って入っちゃった。」
「い、いいけど……びっくりした。」
「ごめんごめん。はい、続きどうぞ。」
律はすっと口を閉じた。怜花はもう一度、スマートフォンに向き直った。
「今度は、旦那さんを……大事にしてほしい。」
「っ……。」
「私はもう、亜衣花の前に現れないから。だから安心して。誰も奪わないし、私ばっかりがずるいようなことは起こらない。お母さんもお父さんも独り占めできる。亜衣花がみんなの一番で、それはずっと変わらないよ。だから、この人だけは亜衣花に会わせられない。会わせたくないんだ。今までの人みたいに、亜衣花にとられてしまっても平気だって言えない。お姉ちゃんだから譲りなさいって言われても、譲れないの。里依のことも、結婚式に連れていきたくない。私は家族を、誰にも紹介したくない。……紹介できない。」
「か、勝手なことばっかり言って……!ママ!お姉ちゃんのこと怒ってよ!」
電話先の音がガチャガチャとやかましく響く。怜花の耳元では律が深くため息をついた。相手には聞こえないくらいの小さな声で、律は呟く。
「……これで『ママ』が怒りだしたら、俺はいよいよキレると思う。」
「律の口から出る『ママ』って違和感しかないなぁ。」
「笑ってる場合~?」
つい零れてしまった小さな笑みに、律が少し拗ねた表情を浮かべた。
「先に嫌がらせをしたのはどっち?」
尖った声が怜花の背後からした。思わず振り返ると、律が今まで見た中で一番冷たい顔をして、言葉を発していた。
「どうも。怜花の嫌がらせなんていう、聞き捨てならない言葉が出てきたので黙っていられなかったよ。どうも、君がどうしても会いたい怜花の『大切な人』です。」
ここで『律』と名前を呼ぶことは憚られた。亜衣花に律の名前を知られてはならない。そんな気持ちが怜花の唇を結ばせた。代わりに律の服を少しだけ引くと『ん、何?』といつもの調子で返ってくるものだから怜花は首を横に振った。
「あー、黙んないよ、この件に関しては。前言撤回してくれませんかね?怜花は君に嫌がらせなんかしていない。君がしてきたことがここに来て戻ってきた。たったそれだけだと認めてくれます?」
「な、何のこと……ですか?」
律が出てきた瞬間に、甘えた声に変わった。その声に怜花の体がわずかに震える。律は怜花を抱きしめる腕にゆっくりと力を入れて、いつものように肩に顎を軽く乗せた。
「そういうの、僕には通用しません。怜花を悪く言うのをやめて、怜花の話、ちゃんと聞いてください。ごめん怜花、割って入っちゃった。」
「い、いいけど……びっくりした。」
「ごめんごめん。はい、続きどうぞ。」
律はすっと口を閉じた。怜花はもう一度、スマートフォンに向き直った。
「今度は、旦那さんを……大事にしてほしい。」
「っ……。」
「私はもう、亜衣花の前に現れないから。だから安心して。誰も奪わないし、私ばっかりがずるいようなことは起こらない。お母さんもお父さんも独り占めできる。亜衣花がみんなの一番で、それはずっと変わらないよ。だから、この人だけは亜衣花に会わせられない。会わせたくないんだ。今までの人みたいに、亜衣花にとられてしまっても平気だって言えない。お姉ちゃんだから譲りなさいって言われても、譲れないの。里依のことも、結婚式に連れていきたくない。私は家族を、誰にも紹介したくない。……紹介できない。」
「か、勝手なことばっかり言って……!ママ!お姉ちゃんのこと怒ってよ!」
電話先の音がガチャガチャとやかましく響く。怜花の耳元では律が深くため息をついた。相手には聞こえないくらいの小さな声で、律は呟く。
「……これで『ママ』が怒りだしたら、俺はいよいよキレると思う。」
「律の口から出る『ママ』って違和感しかないなぁ。」
「笑ってる場合~?」
つい零れてしまった小さな笑みに、律が少し拗ねた表情を浮かべた。