夜を繋いで君と行く
* * *

「うわ…この家にこんなちゃんとしたほかほかの料理が並ぶなんて…。」
「お米は炊いてたんじゃないですか?」
「まぁ怜花ちゃんに貰ったのに合わせて炊いてたけどさぁ、作り立てって感じのこのいかにも店!みたいな風にはならなくない?」
「いやあの…全然店って感じじゃないですけどね。サラダなんてタッパーに入れてますし。」

 結局当然ながら皿はカレーにとられたため、トマトとツナのサラダを入れる器はなく、タッパーに適当に入れるだけになった。細かな調味料もあるとは思えなかったため、ドレッシングは小さめの使い切りタイプを用意した。カレーは二階堂の希望通り具沢山ということで、玉ねぎ、ズッキーニ、トマト、かぼちゃ、セロリ、鶏むね肉をふんだんに使い、バターチキンカレーにした。

「いただきます。」

 両手を合わせてカレーを見つめてそう言ったあと、二階堂の視線は自然に怜花に移った。

「希望、叶えてくれてありがとう。」
「…お口に合うといいんですけど。市販のルーを使ったから味は無難だと思います。」
「市販のルーを使わない以外にカレー作るのってできるの?」
「スパイス混ぜてみたいなことはできると思いますけど、昔何度かやったくらいで今は全然。あ、かぼちゃ、ほくほくで美味しい。合いますね、カレーに。」

 普段はこんな風にゴロゴロとたくさんの野菜を入れることはなく、決まった具材を入れて作るだけだ。だからこそ、二階堂チョイスの野菜には意外性もあるし、意外と悪くないという発見もあって口の中が楽しかった。そんなことを思う怜花の前にいる人は、もっと美味しそうに食べている。

「はぁー…なにこれうまぁ。え、手作りパワーすごくない?普段からこんなに美味いもん食べてんの?って食べてるか。くれるやつ、どれもこれも美味しいもんね。」
「…本当に美味しそうに食べますね。」
「美味しいからね、実際。」

 外で食事をするときも、美味しそうに食べてはいる。しかし今日はいつもよりも一口が大きいし、テンションも高い。それはわかる。

「いつも私がお裾分けしたもの、そんな風に大口開けて食べてるんですか?」
「あ、口がでかいからあっという間になくなっちゃうのか。気付かなかった。」

 そう言いながら、また大きな一口にスプーンいっぱいのカレーが運ばれていく。

(…こんなに美味しそうに食べてくれるなら、作り手冥利に尽きるなぁ。)

 無理して食べていたわけじゃない、美味しいという言葉は嘘ではない。目の前で見せてもらえてやっと、現実だとわかる。そこまでしないと本物だと飲み込めない自分のことは嫌だが、そんな気持ちは、いい食べっぷりを見せてくれるからこそ薄れていく。
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