夜を繋いで君と行く
* * *
「先生。」
「…何ですか?」
「飴色がわかりません。飴なんて味で色変わるじゃん。」
「屁理屈言わないでくださいよ。くったくたになるまでです。」
二階堂に包丁を持たせるわけにはいかないため、怜花が野菜をどんどん切り、二階堂にはじっと見ていればどうにかなるものを任せることにした。飽きてすぐにどこかに行くと思っていたが、二階堂は飽きる様子もなく楽しそうに与えられた仕事に向き合っている。
「あの、お疲れじゃないですか?」
「え、全然?疲れてるように見える?」
「うーん、どちらかというと私には、小学生の調理実習に見えてます。」
「当たってるなーそれ。実際言われるがままだしね。玉ねぎも見てるけど、怜花ちゃんの手際の良さも見てるよ。野菜の皮って包丁でむけるんだ?なんか、皮むく道具使わないと無理だと思ってた。」
「ピーラーの方が早いものもありますけど、買ってこなかったですしね。そんなに量もないし、包丁の切れ味は良すぎるし、問題ないです。」
「さすが先生。」
ニッと笑うと、本当に体だけが大きい子供みたいだった。時々混ぜて、うーんと唸る。そんな姿にくすっと笑ってしまい、すぐ気を引き締めて包丁に意識を向けた。
「でもこういう普通のカレーを作るの久しぶりなので、手順が合ってないかもしれません。」
「普通じゃないカレーって何?」
「あの、この炊飯器くらいの感じの大きさで、電気圧力鍋っていうのがあって、私はカレー作るときは無水カレーなんです。具材を入れて放っておくだけで完成するので。」
「そんなのあるの!?放っておくだけで?」
「はい。その間に違うものを作れるしで、電気圧力鍋は便利で重宝しています。」
「…なるほど。俺が次に狙うべきは電気圧力鍋…。」
「いえ、あの、私は家電を買うことを推進してるわけじゃないですから!」
自炊ができない可能性の方が高いのに、次々に金銭的な投資をしようとする二階堂の行動の意味がわからなくてまた笑ってしまう。笑うとほぐれる。緊張よりも楽しい気持ちが自然に勝る。料理は生きるためのもので、自分のために覚えただけで、そこに楽しいとかそういう気持ちはなかった。でも今日は、確かに『楽しい』。それは料理の工程が、というよりは隣でずっと楽しそうにしている人がいるからに違いなかった。
「先生。」
「…何ですか?」
「飴色がわかりません。飴なんて味で色変わるじゃん。」
「屁理屈言わないでくださいよ。くったくたになるまでです。」
二階堂に包丁を持たせるわけにはいかないため、怜花が野菜をどんどん切り、二階堂にはじっと見ていればどうにかなるものを任せることにした。飽きてすぐにどこかに行くと思っていたが、二階堂は飽きる様子もなく楽しそうに与えられた仕事に向き合っている。
「あの、お疲れじゃないですか?」
「え、全然?疲れてるように見える?」
「うーん、どちらかというと私には、小学生の調理実習に見えてます。」
「当たってるなーそれ。実際言われるがままだしね。玉ねぎも見てるけど、怜花ちゃんの手際の良さも見てるよ。野菜の皮って包丁でむけるんだ?なんか、皮むく道具使わないと無理だと思ってた。」
「ピーラーの方が早いものもありますけど、買ってこなかったですしね。そんなに量もないし、包丁の切れ味は良すぎるし、問題ないです。」
「さすが先生。」
ニッと笑うと、本当に体だけが大きい子供みたいだった。時々混ぜて、うーんと唸る。そんな姿にくすっと笑ってしまい、すぐ気を引き締めて包丁に意識を向けた。
「でもこういう普通のカレーを作るの久しぶりなので、手順が合ってないかもしれません。」
「普通じゃないカレーって何?」
「あの、この炊飯器くらいの感じの大きさで、電気圧力鍋っていうのがあって、私はカレー作るときは無水カレーなんです。具材を入れて放っておくだけで完成するので。」
「そんなのあるの!?放っておくだけで?」
「はい。その間に違うものを作れるしで、電気圧力鍋は便利で重宝しています。」
「…なるほど。俺が次に狙うべきは電気圧力鍋…。」
「いえ、あの、私は家電を買うことを推進してるわけじゃないですから!」
自炊ができない可能性の方が高いのに、次々に金銭的な投資をしようとする二階堂の行動の意味がわからなくてまた笑ってしまう。笑うとほぐれる。緊張よりも楽しい気持ちが自然に勝る。料理は生きるためのもので、自分のために覚えただけで、そこに楽しいとかそういう気持ちはなかった。でも今日は、確かに『楽しい』。それは料理の工程が、というよりは隣でずっと楽しそうにしている人がいるからに違いなかった。