夜を繋いで君と行く
* * *
「うまっ!えっ、めちゃくちゃうまー!焼くの素人でもこんなうまいの?何入れてんの?」
「特にこだわったものは何も入れてないです。多分焼き立てっていうバフですね。レシピ、置いていきましょうか?」
「ううん、大丈夫。また来た時にやろうよ、フレンチトースト。それまでとっとく。」
ふわふわとした笑顔のまま、美味しそうにフレンチトーストを頬張っている姿は、自分じゃなくても可愛いと思うはずだと言い聞かせる。それに、さらりと言われた『次』の話があまりにも自然で、思わずそうですねと相槌を打ちそうになる。これっきりではなく、『次』はあって、それは一体いつまで続けられるものなのだろう。考え込んでしまうとまた思考は重くなり、怜花はもくもくと食事を進めた。
「毎朝こんなの作ってるの?」
「さすがに毎朝ではないですよ。コンビニで買う日だってありますし、頑張ってホットケーキ焼く日もあります。」
「ホットケーキ!?」
「ホットケーキミックスがあれば簡単です。」
「…料理ってすごい。次から次へと新しい技出てくる。」
「技って。技は焼くとか煮るとかそういうのじゃないですか?」
「それも技だけど、なんだろう、料理は食材の繋がりもだし、出てくる料理見ても何使われてるかとか知らないからなー。全部未知の宝箱開けてるみたいな感じ。」
「…なるほど。発想がザ・男の子ですね。」
ようやくいつもペースに戻れたような気がする。会話のテンポも、軽さもこれがいい。迷惑をかけたことを謝りたいけれど、自分から蒸し返すことも憚られて触れることはできそうにない。心地よい会話に身を任せていたいという狡い自分が顔を出して、結局弱い自分はそれに負ける。
「仕事しながら自炊って出来んだね。すごい。」
「決まったルーティーンで動いてるだけですもん。二階堂さんたちは不規則でしょう?自炊をきっちりやるの、大変だと思います。」
「ん-まぁそうだけど、この出来立ての美味しさを知っちゃったらちょっと心は惹かれるよ。あと、こうやって一日の始まりとか途中とか、終わりとかどこかしらで誰かと落ち着いて家で食事するの、なんかいいね。…初めて憧れたかも。」
静かなトーンでぽつりと落ちた、それはきっと本音で。
「…一人の食事は、味気ないですから。」
その本音につられて、昔の自分が感じていたことがするりと出てきてしまった。
「うまっ!えっ、めちゃくちゃうまー!焼くの素人でもこんなうまいの?何入れてんの?」
「特にこだわったものは何も入れてないです。多分焼き立てっていうバフですね。レシピ、置いていきましょうか?」
「ううん、大丈夫。また来た時にやろうよ、フレンチトースト。それまでとっとく。」
ふわふわとした笑顔のまま、美味しそうにフレンチトーストを頬張っている姿は、自分じゃなくても可愛いと思うはずだと言い聞かせる。それに、さらりと言われた『次』の話があまりにも自然で、思わずそうですねと相槌を打ちそうになる。これっきりではなく、『次』はあって、それは一体いつまで続けられるものなのだろう。考え込んでしまうとまた思考は重くなり、怜花はもくもくと食事を進めた。
「毎朝こんなの作ってるの?」
「さすがに毎朝ではないですよ。コンビニで買う日だってありますし、頑張ってホットケーキ焼く日もあります。」
「ホットケーキ!?」
「ホットケーキミックスがあれば簡単です。」
「…料理ってすごい。次から次へと新しい技出てくる。」
「技って。技は焼くとか煮るとかそういうのじゃないですか?」
「それも技だけど、なんだろう、料理は食材の繋がりもだし、出てくる料理見ても何使われてるかとか知らないからなー。全部未知の宝箱開けてるみたいな感じ。」
「…なるほど。発想がザ・男の子ですね。」
ようやくいつもペースに戻れたような気がする。会話のテンポも、軽さもこれがいい。迷惑をかけたことを謝りたいけれど、自分から蒸し返すことも憚られて触れることはできそうにない。心地よい会話に身を任せていたいという狡い自分が顔を出して、結局弱い自分はそれに負ける。
「仕事しながら自炊って出来んだね。すごい。」
「決まったルーティーンで動いてるだけですもん。二階堂さんたちは不規則でしょう?自炊をきっちりやるの、大変だと思います。」
「ん-まぁそうだけど、この出来立ての美味しさを知っちゃったらちょっと心は惹かれるよ。あと、こうやって一日の始まりとか途中とか、終わりとかどこかしらで誰かと落ち着いて家で食事するの、なんかいいね。…初めて憧れたかも。」
静かなトーンでぽつりと落ちた、それはきっと本音で。
「…一人の食事は、味気ないですから。」
その本音につられて、昔の自分が感じていたことがするりと出てきてしまった。