夜を繋いで君と行く
「だね。…フレンチトーストもミネストローネも作ってくれてありがとう。またやろうね。」
「…はい。」
思わず頷いてしまった怜花の返事に、またニコッと笑う二階堂はずっとごきげんで、それこそ心から笑っているみたいに見えて、怜花の胸はきゅっと苦しくなった。自分はそんな風に笑えていないだろうと思えば思うほど苦しい。笑えたら良かった、素直に。美味しいね、褒めてくれてありがとう、また作りたいな、今度は何が食べたい?そんな言葉が正しくて、それが素直に言えたらきっと可愛かった。二階堂と食事をすることは苦痛じゃない。むしろ、こんなに美味しそうに食べてもらえることを嬉しく思う。二階堂といると、素直に気持ちを伝えられない自分、迷惑をかけてばかりの自分、自分の嫌で、ダメなところにばかり目がいってしまって苦しくなるのに、それでもこの優しい空間と、居心地の良さに気付いた今は、もう少しだけここにいたいと思ってしまう。
いつまで続くかわからないこの曖昧な関係に、『また』はあと何回訪れるの?と、冷静な自分は問う。二階堂が終わりたいと言ったら、その瞬間に終わる。でもまだ、二階堂は『また』と言ってくれる。怜花の方から『終わりたい』とは、もう言えないのかもしれない。
「怜花ちゃん…?」
「あっ、すみません!…ちょっと…。」
「うん、何?」
「えっと…。」
「うん。」
自分の中にだけ秘めておくべき気持ちがあることに気付かれて、それを聞く気があるという目を向けられている。逃す気はないのも、何となくだが伝わる。
「何言われても大丈夫だからさ、考えてること話してよ。俺も結構頑張って素直に話してるよ、ずっと。」
「二階堂さんが、頑張って…?」
「うん。俺もね、怜花ちゃん側の人間だからね。他人に息するみたいに壁を作るし、適当な愛想笑いはするし、基本は一人がいいし。何かを素直に話すのには結構なエネルギーが要る。受け入れてもらえないことが常に頭をよぎるから。」
最後の一言は衝撃だった。すげなく切り捨てられてきた自分とまた重なる。
「そんな風には…全然…見えません。だってずっと笑ってて、愛想笑いには…見えなくて。」
「それはさ、だって昨日から楽しいことしかしてないじゃん。昨日からっていうか、怜花ちゃんとは楽しいことしかしてないよ。適当に喋って、ご飯食べて、一緒に寝て。朝起きてまたこうやってご飯食べて。一人だったら別に適当に流していくことも、二人だったら結構楽しくなるってそういうのも初めてわかって、楽しい。…だから俺も普段より笑ってると思う。でも、怜花ちゃんも笑ってるよ、ちゃんと。」
「…はい。」
思わず頷いてしまった怜花の返事に、またニコッと笑う二階堂はずっとごきげんで、それこそ心から笑っているみたいに見えて、怜花の胸はきゅっと苦しくなった。自分はそんな風に笑えていないだろうと思えば思うほど苦しい。笑えたら良かった、素直に。美味しいね、褒めてくれてありがとう、また作りたいな、今度は何が食べたい?そんな言葉が正しくて、それが素直に言えたらきっと可愛かった。二階堂と食事をすることは苦痛じゃない。むしろ、こんなに美味しそうに食べてもらえることを嬉しく思う。二階堂といると、素直に気持ちを伝えられない自分、迷惑をかけてばかりの自分、自分の嫌で、ダメなところにばかり目がいってしまって苦しくなるのに、それでもこの優しい空間と、居心地の良さに気付いた今は、もう少しだけここにいたいと思ってしまう。
いつまで続くかわからないこの曖昧な関係に、『また』はあと何回訪れるの?と、冷静な自分は問う。二階堂が終わりたいと言ったら、その瞬間に終わる。でもまだ、二階堂は『また』と言ってくれる。怜花の方から『終わりたい』とは、もう言えないのかもしれない。
「怜花ちゃん…?」
「あっ、すみません!…ちょっと…。」
「うん、何?」
「えっと…。」
「うん。」
自分の中にだけ秘めておくべき気持ちがあることに気付かれて、それを聞く気があるという目を向けられている。逃す気はないのも、何となくだが伝わる。
「何言われても大丈夫だからさ、考えてること話してよ。俺も結構頑張って素直に話してるよ、ずっと。」
「二階堂さんが、頑張って…?」
「うん。俺もね、怜花ちゃん側の人間だからね。他人に息するみたいに壁を作るし、適当な愛想笑いはするし、基本は一人がいいし。何かを素直に話すのには結構なエネルギーが要る。受け入れてもらえないことが常に頭をよぎるから。」
最後の一言は衝撃だった。すげなく切り捨てられてきた自分とまた重なる。
「そんな風には…全然…見えません。だってずっと笑ってて、愛想笑いには…見えなくて。」
「それはさ、だって昨日から楽しいことしかしてないじゃん。昨日からっていうか、怜花ちゃんとは楽しいことしかしてないよ。適当に喋って、ご飯食べて、一緒に寝て。朝起きてまたこうやってご飯食べて。一人だったら別に適当に流していくことも、二人だったら結構楽しくなるってそういうのも初めてわかって、楽しい。…だから俺も普段より笑ってると思う。でも、怜花ちゃんも笑ってるよ、ちゃんと。」