夜を繋いで君と行く
* * *
「あー…あっという間すぎる。」
「あの、本当に無理はしないでくださいね。私のことは放っておいてもらっても、とにかく仕事に支障が出なければそれで大丈夫ですから。」
もうすぐ、怜花の家の近くの公園までたどり着く。二階堂はいつもここで待ち、怜花は二階堂のご飯のお供を取ってくる。それがここ1か月の二人のいつもの流れだった。公園に着くとパッと手を離すはずの二階堂が、なかなか手を離してくれない。
「…あの、二階堂さん?」
「3週間ぶりとかじゃん、今日。」
「…そう、かもしれませんね。仕事が忙しいということは引く手数多ということで、喜ばしいことじゃないですか。」
「それはそうなんだけど、…なんていうか、頑張るエネルギーみたいなものの不足を感じるっていうか…。」
「ちゃんと食べてないんですか?」
「食べてるし寝てはいる。気絶してる。」
「気絶!?」
「なんか、寝落ちる。怜花ちゃんに電話したいんだけど、電話中に寝落ちたらなって思ってできない日もある。」
「気絶するくらい疲れてるなら、電話しないで寝るのが正解です。」
「…理屈はわかってる。でもエネルギーは不足してる。」
「エネルギー、持ってくるので待っててください。」
「…うん。」
ようやく手が離れる。二階堂のあったかい手が離れると、途端に11月の風にやられて怜花の指は冷たくなった。
部屋に入り、いつもより多めに用意したタッパーを保冷バックに詰める。保冷バックもいつもより大きいものに変更した。一刻も早く二階堂を家に帰すべく、怜花も久しぶりにダッシュした。
「今日のはこちらです。」
「いつもより大きい!」
「品数少し多くしました。でも早めに食べないと悪くなるのは変わらないので、朝とかお昼に持っていくとかして上手く消費してください。」
「…ありがとう。」
心なしか、少し痩せたようにも見える。ライブに向けて絞っているのかもしれないが、元々太ってはいないし、細身な方である。いつもよりも歯切れが悪く、言葉がつっかえがちな様子に少し心配になり、怜花は二階堂の顔を覗き込んだ。
「…大丈夫、ですか?」
「ん-…あんまり大丈夫じゃないかも。10秒だけ、手、貸して。」
保冷バックを持っていない方の二階堂の手が、怜花の手を取った。指と指が絡み合って、二階堂がきゅっと力を込める。初めて、こんな風に手を握られた。そのことに焦りもするが、疲れているから少し誰かに頼りたくなって、その誰かはたまたま近くにいた自分なのだろうと結論付ける。頑張れ、の気持ちを込めて、怜花も握り返した。
「…とりあえず大きな山は12月頭のライブですね。そこまで、頑張ってください。」
「ライブ終わったら第4回お泊まり会開催して。」
「…それは二階堂さんのお仕事の忙しさによりますけどね。」
「あー…あっという間すぎる。」
「あの、本当に無理はしないでくださいね。私のことは放っておいてもらっても、とにかく仕事に支障が出なければそれで大丈夫ですから。」
もうすぐ、怜花の家の近くの公園までたどり着く。二階堂はいつもここで待ち、怜花は二階堂のご飯のお供を取ってくる。それがここ1か月の二人のいつもの流れだった。公園に着くとパッと手を離すはずの二階堂が、なかなか手を離してくれない。
「…あの、二階堂さん?」
「3週間ぶりとかじゃん、今日。」
「…そう、かもしれませんね。仕事が忙しいということは引く手数多ということで、喜ばしいことじゃないですか。」
「それはそうなんだけど、…なんていうか、頑張るエネルギーみたいなものの不足を感じるっていうか…。」
「ちゃんと食べてないんですか?」
「食べてるし寝てはいる。気絶してる。」
「気絶!?」
「なんか、寝落ちる。怜花ちゃんに電話したいんだけど、電話中に寝落ちたらなって思ってできない日もある。」
「気絶するくらい疲れてるなら、電話しないで寝るのが正解です。」
「…理屈はわかってる。でもエネルギーは不足してる。」
「エネルギー、持ってくるので待っててください。」
「…うん。」
ようやく手が離れる。二階堂のあったかい手が離れると、途端に11月の風にやられて怜花の指は冷たくなった。
部屋に入り、いつもより多めに用意したタッパーを保冷バックに詰める。保冷バックもいつもより大きいものに変更した。一刻も早く二階堂を家に帰すべく、怜花も久しぶりにダッシュした。
「今日のはこちらです。」
「いつもより大きい!」
「品数少し多くしました。でも早めに食べないと悪くなるのは変わらないので、朝とかお昼に持っていくとかして上手く消費してください。」
「…ありがとう。」
心なしか、少し痩せたようにも見える。ライブに向けて絞っているのかもしれないが、元々太ってはいないし、細身な方である。いつもよりも歯切れが悪く、言葉がつっかえがちな様子に少し心配になり、怜花は二階堂の顔を覗き込んだ。
「…大丈夫、ですか?」
「ん-…あんまり大丈夫じゃないかも。10秒だけ、手、貸して。」
保冷バックを持っていない方の二階堂の手が、怜花の手を取った。指と指が絡み合って、二階堂がきゅっと力を込める。初めて、こんな風に手を握られた。そのことに焦りもするが、疲れているから少し誰かに頼りたくなって、その誰かはたまたま近くにいた自分なのだろうと結論付ける。頑張れ、の気持ちを込めて、怜花も握り返した。
「…とりあえず大きな山は12月頭のライブですね。そこまで、頑張ってください。」
「ライブ終わったら第4回お泊まり会開催して。」
「…それは二階堂さんのお仕事の忙しさによりますけどね。」