年下ワンコと完璧上司に溺愛されて困っています。
(うそっ……起きてた!?)
 驚きで頭が真っ白になる。
 至近距離にある碧の顔、掴まれた手首、組み敷かれる体勢——すべてが非日常すぎて息が詰まる。

(このまま、キスされちゃうの……!?)
 鼓動が爆発しそうなほど高鳴り、全身が熱くなる。
 唇に意識が吸い寄せられ、時間がゆっくり流れていくみたいで——。

 ——でも次の瞬間。
 碧の体重がドサッと覆いかぶさってきて。

「……すぅ……すぅ……」

 耳元に届いたのは、規則正しい寝息だった。

(……寝ぼけてただけ……?)
 張りつめていた力が一気に抜ける。
 胸を押さえながら、熱のこもった頬を隠すように目をぎゅっと閉じた。

(よ、よかった……けど……顔が熱い……。私、何やってるのよ……)
 安堵と照れで胸を押さえながらも、状況は何ひとつ解決していなかった。
 ——碧の身体はまだ、しっかりと私の肩にのしかかっている。

(……重い、でも起こしたら絶対気まずい……!)
 そっと肩に手を添え、できるだけ音を立てないように横にずらそうとする。

 ——その瞬間、ふいに顔が近づいてしまった。
 碧の吐息が頬をかすめて、心臓が跳ね上がる。

(うそっ……近い、近すぎる……!)
 頬にかかる息だけで理性が溶けそうになり、思わず目をぎゅっと閉じてしまう。

 必死に気を取り直し、もう一度そろりと腕を持ち上げる。
(お願いだから起きないで……! 今これ見られたら、私、死ぬ……!)

 ようやく抜け出し、ソファの端にぺたりと座り込んだ。
(……もぉ……自爆で心臓止まるかと思った……)

 恐る恐る振り返る。
 本当に寝てる……よね?
 規則正しい寝息を確認して、私は思わずふう~~っと崩れ落ちる。

(ああ、やってしまった。吸い寄せられてしまった……恐ろしい子……)
 脳裏にゴゴゴゴ……と効果音が響く。

 気を落ち着かせながら、ぐったり寝ている碧に視線を向ける。
(それにしても碧ったら、寝相悪すぎない? ベッドに移したいけど……無理、だよね)

 せめてと思い、タオルケットをそっとかけてやる。
(今日は休日だから良かったけど……仕事ある日にも来てくれたりするのかな……)

 そんなことを考えながら、私は着替えやら化粧を済ませ、碧が起きた時のために軽く食べられるものを作っておく。

「……よし、完璧」
 一通り準備を終え、ソファの下に座って寝ている碧を見上げた。
 その無防備な寝顔に胸がときめく。
(これって……まるで恋人同士みたいじゃない!?)

 気づけば、そっと碧の頭をなでていた。
 柔らかい髪が指に触れる。

 そのとき。

「……そんなに撫でたら、止まらなくなりますよ?」

「ッッ!?!?」
 耳元に落ちた声に、全身が跳ね上がる。

「い、いつから起きてたのおおお!?」
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