年下ワンコと完璧上司に溺愛されて困っています。
第11話 いや、笑いごとじゃないッ!
「こんなにおねーさんが僕のことを想ってくれてるの、知らなくて。
真剣すぎたらキモいと思われるかと思って……でも、平静を装いすぎました……ね」
うつむきながら言う碧の声は、小さくて弱々しい。
「せめて、パンくずくらい払ってから告白してよね!」
「……はい」
またもシュンと肩を落とす碧。子犬の耳がぺたりと寝てしまったみたいに見える。
なのに、私の胸の中の熱は冷めるどころかじわじわ膨らんでいく。
そうだ、まだ一番引っかかってることを、ちゃんと聞けてない。
……と、いうか話そらされてない?
その事実に気づいた瞬間、身を乗り出し、テーブルに手をドンとついた。
クワッと碧につかみかからんばかりの勢いで叫んでしまう。
「女の子が好きなのに、どうして男と付き合ってたのよ――!!」
詰め寄られた碧は、気まずそうに口を開いた。
「ええと…………」
「小さいころから新堂家の家訓で“人に優しく”って育てられたので……誰かが喜ぶ顔を見るのが好きなんです。」
碧は少し気恥ずかしそうに笑った。
(……そっか。この子は昔からそうなんだろうな)
人懐っこくて、誰にでも優しくて、甘え上手。
しかもこのビジュアル……。
それはもう、さぞかしモテてきたに違いない。
「やっぱりモテてきたんだね……」
思わず半分呆れたように口をついて出た言葉。
「まあ……そうですね」
碧は視線を逸らして、苦笑いを浮かべる。
「でも……“人に優しく”って家訓を真に受けすぎたせいで、勘違い……させちゃったみたいで。
学生の頃にちょっと事件になったことがあって」
「じ、事件!?」
「僕のことを好きになりすぎた子がいて……」
碧はわずかに眉をひそめ、困ったように笑った。
「その頃、ちゃんと付き合っていた子がいたから、君とは付き合えないってハッキリ断ったんです。
けど……『障害がある恋こそ燃える!』って余計に燃え上がっちゃったみたいで。
結局、ストーカーまがいのことになって、警察沙汰にまで発展してしまって」
「っ……」思わず息をのむ私。
「それ以来、強く断るのが怖くなったんです。……だから、来る者拒まず、みたいな形になってしまったのかも」
碧は視線を落としながら苦笑する。
「そ、それで男の人と?」
思わず声が裏返る。
「はい……」
(だからって男女問わず付き合うなーーー!!)
心の中で叫ぶけど、真剣な顔で答える碧を見たら、さすがに声に出せなかった。
「え~~っと、ちなみに……あの日、路地裏で乳繰り合ってたスーツ男とは寄りを戻したの?」
探るように問いかけると、碧はきょとんとした顔で。
「乳繰りって久々に聞きましたけど」
ぷっと笑う。
「いや、笑いごとじゃないッ!」
私は机をドンッと叩いた。
頭の中で【ゴゴゴゴゴ……】と効果音が鳴り響く。
「ひっ!」
碧は肩をすくめ、子犬みたいにビクッとした。
「も、戻してません!! あの後、喧嘩してた奥さんから電話が来て、我に返ったみたいで帰っていきました」
「……は?」
耳を疑った。
「け、結婚してる男と付き合ってたってこと?」
思わずドン引き。私は反射的にうしろへ下がり、碧との距離を取った。
真剣すぎたらキモいと思われるかと思って……でも、平静を装いすぎました……ね」
うつむきながら言う碧の声は、小さくて弱々しい。
「せめて、パンくずくらい払ってから告白してよね!」
「……はい」
またもシュンと肩を落とす碧。子犬の耳がぺたりと寝てしまったみたいに見える。
なのに、私の胸の中の熱は冷めるどころかじわじわ膨らんでいく。
そうだ、まだ一番引っかかってることを、ちゃんと聞けてない。
……と、いうか話そらされてない?
その事実に気づいた瞬間、身を乗り出し、テーブルに手をドンとついた。
クワッと碧につかみかからんばかりの勢いで叫んでしまう。
「女の子が好きなのに、どうして男と付き合ってたのよ――!!」
詰め寄られた碧は、気まずそうに口を開いた。
「ええと…………」
「小さいころから新堂家の家訓で“人に優しく”って育てられたので……誰かが喜ぶ顔を見るのが好きなんです。」
碧は少し気恥ずかしそうに笑った。
(……そっか。この子は昔からそうなんだろうな)
人懐っこくて、誰にでも優しくて、甘え上手。
しかもこのビジュアル……。
それはもう、さぞかしモテてきたに違いない。
「やっぱりモテてきたんだね……」
思わず半分呆れたように口をついて出た言葉。
「まあ……そうですね」
碧は視線を逸らして、苦笑いを浮かべる。
「でも……“人に優しく”って家訓を真に受けすぎたせいで、勘違い……させちゃったみたいで。
学生の頃にちょっと事件になったことがあって」
「じ、事件!?」
「僕のことを好きになりすぎた子がいて……」
碧はわずかに眉をひそめ、困ったように笑った。
「その頃、ちゃんと付き合っていた子がいたから、君とは付き合えないってハッキリ断ったんです。
けど……『障害がある恋こそ燃える!』って余計に燃え上がっちゃったみたいで。
結局、ストーカーまがいのことになって、警察沙汰にまで発展してしまって」
「っ……」思わず息をのむ私。
「それ以来、強く断るのが怖くなったんです。……だから、来る者拒まず、みたいな形になってしまったのかも」
碧は視線を落としながら苦笑する。
「そ、それで男の人と?」
思わず声が裏返る。
「はい……」
(だからって男女問わず付き合うなーーー!!)
心の中で叫ぶけど、真剣な顔で答える碧を見たら、さすがに声に出せなかった。
「え~~っと、ちなみに……あの日、路地裏で乳繰り合ってたスーツ男とは寄りを戻したの?」
探るように問いかけると、碧はきょとんとした顔で。
「乳繰りって久々に聞きましたけど」
ぷっと笑う。
「いや、笑いごとじゃないッ!」
私は机をドンッと叩いた。
頭の中で【ゴゴゴゴゴ……】と効果音が鳴り響く。
「ひっ!」
碧は肩をすくめ、子犬みたいにビクッとした。
「も、戻してません!! あの後、喧嘩してた奥さんから電話が来て、我に返ったみたいで帰っていきました」
「……は?」
耳を疑った。
「け、結婚してる男と付き合ってたってこと?」
思わずドン引き。私は反射的にうしろへ下がり、碧との距離を取った。