年下ワンコと完璧上司に溺愛されて困っています。

「い、いえ! 付き合ってたのは結婚する前の話で、不倫とかは……ないはず……」
 碧は慌てて両手をぶんぶん振る。

「はず!?」

「いやその……嘘つかれてたかもしれなくて……」

「…………」
 無言でにらむ私。碧は目を逸らして縮こまる。

(完全に尋問モードに入ってるな、私……)

「いったんそこは、そういうことにしておきましょうか」
 ジロッと睨みながら言うと、碧はおずおずと小首をかしげる。

「いったんって……」

「それでッ!!」
 机を再びバンッ!

「ひぃっ!」
 またもやビクつく碧。

「なんでよりによって男とベロチューしてる時に、わたしに手を振ったのよ!!」

「おねーさんと会えて嬉しくて……」

「状況をッ! 考えてッ!!」
 バンッ、バンッ! 手のひらを机に叩きつける。
 碧は叱られた子犬みたいに情けない顔で小さく肩をすくめた。

(……もうこうなったら洗いざらい聞くしかない!)

「他には? 付き合ってる人……何人くらいいるの?」

「…………」

「さ、流石に片手で収まるよね……?」

「…………」

「やめてーー!! 怖いーーー!!」
 私は頭を抱えて絶叫した。

 これは……想像以上のスケコマシ。いや、男もたらし込むんだから――人たらしか。
 なんて恐ろしい。恐ろしすぎて理解が追いつかない。

 まったく理解できないが、恐る恐る聞いてみる。
「ねえ……言い寄られたら、男女問わず誰とでも寝ちゃうの……?」

「それは違います……!」
 しょぼくれっぱなしだった碧が、久々に声を荒げた。

「僕、人と話すのは好きなんで、誰とでも楽しくおしゃべりとかはするんですけど。
 ほら、相手が好意を持ちはじめたなって、なんとなくわかるじゃないですか」

(いや、わからんけど!)

「で、『わたしだけを見て!』とか『他に付き合ってる人がいるなんて許せない!』みたいに、
 独占欲が強そうな気配を感じたら……その瞬間シャッター下ろして塩対応です」
 胸を張って堂々と言い切る碧。まるでいいことを言ったぞと誇らしげな顔だ。

「…………」
 理解が追いつかない。頭の中に「?」マークが大量発生しているのが自分でもわかる。

「……えっ、それって。選別して、他に彼女いても気にしないって……割り切れる人としか付き合わないってこと!?」
 ようやく追いついた言葉が口から飛び出した。

「はい。僕、付き合った人にはとことん尽くしたいんです。
 愚痴を聞いてほしい人にはずっと話を聞くし、『お姫様扱いしてほしい』って言われたら全力でお姫様扱いしますよ?」
 ふふん、と胸を張る碧。完全に「褒めて!」の顔だ。

「俺様的に攻めてほしいって言われたら、いくらでも攻めますし。『王子様がいい』って言われたら、いくらでも甘やかして守ります」
 碧はわずかに笑みを浮かべ、さらりと続ける。

「身体のぬくもりを望む人には……ひと晩中、腕の中で眠らせてあげますし、
 もちろん、眠りたくないなら、朝まで……」
 そこまで言って、碧の口がピタリと止まった。失言に気づき、しまった。と青ざめる顔。
 
「はぁっ!?」
 空気を切り裂くような声が私の喉から飛び出す。

「えっ。清々しいほどのクズじゃん」
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