ふたりはミラクルエンターテイナー!

4.

 ところが、またまたここで問題発生!
「あれあれ? おかしいな」
 野原におりて、雲をふとんがわりにしようと思ったのに、かんじんの雲がどんどん空に上っていこうとするのです。
 パンぞうが雲にしがみつきながら言うことには。
「このままじゃ軽すぎて飛んじまうんだ。ネル、じょうぶな糸でしっかりぬいあわせないと、ふとんにならないぜ」
 ええ~、どうしよう……。

 おさいほうの苦手なネルにふたたび立ちはだかる壁。
「あら、ぬいあわせるなら、あたしできるわよ」
 と、手をあげたのは、なんとモエ。
「モエさん、おさいほう得意なの?」
 モエは大きくうなずいて、
「あたし、アイドルのときのいしょう、自分でドレスをリメイクして作ってるんだもん」
 と、ニッコリ。
 ネルから針と糸を借りるとチクチクチク……と、すごいスピードで全員ぶんの雲のふとんを作ってみせました。
「うわぁ~、ホントにフッカフカね。おしろのベッドより、とびきりすばらしいわ」
 モエは雲のふとんに寝ころび、しあわせそうです。
「あ……ありがとう、モエさん。てつだってくれて!」
 ネルがお礼を言うと、なぜかモエはジロリとネルをにらみつけました。
 んんん!? わたし、なにか悪いこと言っちゃったかな?
 ビクビクしているネルに、モエはまじめな顔で、
「『さん』はやめて」
「え?」
「だから、『モエさん』じゃなくて『モエ』でいいから。あたしも、あなたのこと『ネル』って呼ぶから。よろしくね!」
「う、うん!」
 ちょっぴりとまどっているネルとは反対に、モエはニコニコ大はしゃぎ。
「あたし、外でねむるのってはじめて! 夜の野原って、とってもおだやかな香りね、それに、こんなきれいな星空見たことないわ。連れてきてくれてありがとう。ネル、パンちゃん!」
 思いっきり両手両足を伸ばすと、そのままスヤスヤとねむってしまいました。
 モエって、とってもふしぎなプリンセス。
 わたしが知ってるお話のプリンセスとはぜんぜんちがう。
 ちょっぴりワガママで、とってもパワフルで、だけど、たよりになるところもあって。
 魔法の水晶玉によると、アウロラ王国にわたしのドレス作りのパートナーがいるって出てたけど、それって、もしかして――。
「まさかね……」
 少しドキドキしながら、雲のふとんに寝ころんでいるネルを、夜空にきらめくスパンコールのような星たちがキラキラと見守っていました。
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