ふたりはミラクルエンターテイナー!
第三章

1.

 ご先祖さまのように、とびっきりのドレスを作るのがわたしの夢。
 魔法学校のファッションショーに向けて、一生けんめいがんばらなくちゃ。
 みんなが喜んでくれる、みんなが笑顔になれる、みんなが幸せになれる、そんなステキなドレス。
「ねぇ、ネルはドレスを着ないの? そのドレスはあなたのためのものじゃないの?」
 わたし? わたしがドレスを?
 だって、わたしは……。

「おっはよー!」
 明るい声とともに顔を出したのは、お日さま――ではなくて、お日さまのようにまぶしいはちみつ色のロングヘアと、まあるいエメラルド色のひとみの女の子。
「わあっ!」
 ネルはびっくりして、雲のふとんから飛び起きました。
 そうだ。わたし、モエといっしょだったんだっけ!
「早く行こうぜ、ネル。ドレスの材料、探しに行かねーと」
 パンぞうが、まだねむそうなネルのほっぺたをちょいちょいとつつきました。
 ネルたちが集めたのはまだ虹の布だけです。
「頭にかざるティアラも作りたいな。それに、ドレスやティアラにふさわしい、くつもあったほうがいいよね。どこに行けばいい材料が手に入るかな?」
 ネルは頭をなやませます。
「また魔法の水晶玉にたずねてみればいいんじゃねーか?」
 と、パンぞう。
「そうだね……あれっ?」
 いつもなら答えてくれるはずの魔法の水晶玉が、うんともすんともいいません。玉のなかには、文字がぼんやり浮かんでいます。
『魔力切れです。パワーチャージしてください』
「しまった、使えなくなっちゃった!」
 充電しないとスマートフォンが使えないように、魔女のアイテムは魔力をたくわえないと動かないのです。
「どうしよう~」
 ネルは困ったように頭をかかえました。
 すると。
 ぐうううう……。
 ネルのおなかが大きく鳴りました。
「うそ~、水晶玉だけじゃなく、わたしもエネルギー切れ?」
 こんなときに……と落ちこむネル。
 パンぞうも、おなかがへっているようで、
「ネル、魔法で朝ごはんとか出せねーのか?」
「ダメダメ、知ってるでしょ? わたし、ハサミの魔法と空を飛ぶこと以外の魔法はにがてなんだ。リンゴとか出しても五秒で消えちゃうんだよね」
 ネルは、ガクッとかたを落としました。
「そうだわ、ネル。アウロラ王国の先に、ファルファデ王国っていう妖精の国があるのよ。そこは、パンケーキがおいしくて有名なんだって。行ってみようよ!」
 と、ひらめくモエ。
「パンケーキ?」
「おっ、いいじゃん。ハラがへってちゃドレスも作れねーよ」
 パンぞうも、モエに大さんせい。
「いいのかなぁ……?」
 ドレス作りの材料のことが気になるネルでしたが、ひとまずファルファデ王国に行ってみることにしました。
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