ふたりはミラクルエンターテイナー!

3.

「モエさまって?」
「えっ、知らないの?」
 おや? とネルを見つめるクラスメイトの子たち。
「アウロラ王国のプリンセスよ。わたしたちと同い年で、すっごくおしゃれで、キュートなの」
「ファッションリーダーとしても有名なのよ。こないだ雑誌に出てるの見たわ」
「モエさま、わたしの作ったドレス着てくれないかな~?」
 みんなプリンセスの話題でもちきり。
「そうなんだぁ……」
 ほんもののプリンセスかぁ。どんな子なんだろう。
 わたしも会ってみたいけど……。
 シンデレラの魔女の子孫のわたしが、こんなにぶきっちょだってことが分かったら、きっと、プリンセスに笑われちゃうよね。
 ネルは、しくしくと青空の布で涙をふきます。
「負けんな、ネル! 失敗は成功の母ちゃんだ。くじけるな」
 必死にエールをおくるパンぞう。
 すると、むくっ、とネルは顔をあげて、
「ねぇ! 先生、ペアを組んでもいいって言ってたよね。パンぞう、ドレスのデザインはわたしがするから、ドレスぬってくれない?」
 しかし、パンぞうは
「オレさまがぁ? ゴメンだね、そんなチクチクするやつ。うっかり手に針さしてケガでもしたらどーすんだ!」
 と、大反対。
「なによ、つめたいんだから。よーし、こうなったら!」
 ネルはバッグから、つやつやとした玉を取り出しました。
「教えてください。わたしのドレスづくりのパートナーはどこですか?」
 ネルの持っている玉が、キラキラとかがやきだしました。
「おっ。それ、魔法の水晶玉か!」
 パンぞうがワクワクしながらのぞきこみます。
 水晶玉のなかに、七色の虹がきらめく王国が浮かび上がりました。
「ここ、アウロラ王国だ! アウロラ王国ってたしか……」
 さっきクラスメイトのみんなが言ってた、とってもカワイイプリンセスがいるところだっけ。
「アウロラ王国? こっからちょっと遠くねーか?」
「だけど、わたしのドレス作りのパートナーになってくれるひとがいるかもしれないんだよ。ちょっとくらい遠くたって、わたしならへっちゃらだから!」
 ほうきでビュビュン! と、飛んで行っちゃうもんね。
 ハサミの魔法と、ほうきで空を飛ぶことだけは、わたし、とくいなんだ。
 「オレ、あんまりほうきに乗ってると、乗りもの酔いすんだけど……しょうがねぇなぁ」
 パンぞうはしかたなくうなずきました。
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