ふたりはミラクルエンターテイナー!

5.

「見つけた!」
 ネルは、切った布をほうり出してパンぞうを追いかけましたが、ざんねん! あとちょっとで手が届きません。
 どうしよう、このままじゃパンぞうがペチャンコになっちゃう!
 ところが。
 パシッ!
 みごと、パンぞうをキャッチしたのは、くりっとしたエメラルド色の目で、はちみつ色のロングヘアがにあう女の子。
 年はネルと同い年くらい。
 ピンクのリボンとレースがたくさんついた上着とミニスカート姿です。
「あらっ? 今日はフシギなところからお客さまが来たわ」
 女の子はパンぞうを見てニコニコと笑っています。
 うわぁ、なんてカワイイ女の子……って、見とれてるばあいじゃなかった!
「パンぞう!」
 ネルが猛スビードでパンぞうのもとにかけ寄ると、女の子はますますうれしそうに、
「まぁ、空からのお客さんなんてはじめて。ようこそ、あたしのオンステージへ!」
 お客さん? オンステージ?
 ネルは落ち着いてあたりを見まわします。
 席に座っているたくさんの観客が、ネルをめずらしそうにながめています。
 観客の手には『がんばれ!』、『MY推し』、『ポーズして♪』などのメッセージが書かれたうちわや垂れ幕がたくさん。
 もしかして、ここって、コンサート会場?
 でもって、この子、ひょっとしてアイドル!?
 静かになったステージに、さっきネルが切った虹色の布がヒラヒラと舞いおりました。
「しつれいしましたーっ!」
 ネルはパンぞうをモエから受け取ると、真っ赤な顔のまま、ほうきに乗って猛スピードで飛び去りました。

「あーあ、また大しっぱい……」
 夕暮れどき。ネルはほうきの上でガクンとうなだれていました。
 もうすっかり虹は消え、あかね色の空が広がっています。
「虹の布は落としてきちゃったし、あの子のコンサートのジャマしちゃったし、わたしのパートナーは見つからないままだし、なにもかもダメダメだよぅ!」
「めげんな、ネル! 失敗は成功の――」
「『お母さん』でしょ? でも、こんなにたくさん失敗が続いちゃ、もうなにもうまくいきそうに思えないよ」
 ネルはすっかり自信をなくしてしまいました。
「だけどなーネル……ん?」
 パンぞうが、おどろいたように目を見張っています。
「どうしたの、パンぞう?」
「あそこ見ろよ、あれってネルが切った布じゃねーか?」
 パンぞうが指さした先は、なんと、アウロラ王国のお城。
 お城のてっぺんにある窓から、虹の布がヒラヒラはためいています。
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