彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
あの日以来、秋太の視線は以前にも増して熱を帯び、京子を追いかけるようになった。
その執着から逃れるため、そして彼に完全に諦めてもらうため、京子は一つの賭けに出る。

その日の仕事終わり、京子は佐藤を食事に誘った。
二人きりになるのを待って、京子は切り出した。
「佐藤部長。先日のお話、もし、まだ有効でしたら…」

京子の言葉に、佐藤は驚いて目を見開いた。
以前、彼は「君と柊くんを、僕に守らせてほしい」と、真剣な交際を申し込んでいたのだ。
「鏡先生…本気ですか?」
「はい。部長のような誠実な方と、柊と三人で…新しい人生を歩んでみたい、と」

それは、秋太を諦めさせるための嘘だった。
だが、目の前で純粋に喜んでくれる佐藤の姿に、京子の胸は罪悪感でちくりと痛んだ。


翌日、「鏡弁護士と佐藤部長が結婚へ」という噂は、京子の意図通り、あっという間に社内を駆け巡った。


その日の夕方、会社を出ようとする京子の前に、秋太が立ちはだかった。
その顔は、今まで見たことがないほど蒼白だった。
「…話がある」

人気のない給湯室に、京子を連れ込む。
「部長と、結婚するというのは…本当か」
絞り出すような声だった。楓は心を鬼にして、まっすぐに彼の目を見つめ返した。
「ええ。そのつもりです」
「……」
「彼は、私と息子のことを、心から大切にしてくださると言っています。私には、もったいないくらい素敵な方です」
一言発するたびに、自分の心がナイフで抉られるようだった。だが、もう後戻りはできない。

すべてを言い終えた京子が、その場を去ろうとした時だった。
「…結婚なんか、できないよ」
< 23 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop