彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
「茅野さん、今夜食事でもどうかな。この前の資料、素晴らしかった。お礼にプレゼントを」
周囲が「なぜあの女に?」と訝しむ中、秋太は一途に楓だけを見つめていた。
楓は目的を遂げるため、頑なに彼を拒み続けた。
恋愛にうつつを抜かしている暇などない。
そんなある日、宗田ホールディングスの未来を左右する、アメリカの大手投資会社との最終契約の日がやってきた。しかし、重役会議室の空気は凍りついていた。先方の社長であるジェームス氏は、こちらの提案に首を縦に振らない。営業部長が必死に英語で説明するが、微妙なニュアンスが伝わらず、ジェームス氏の眉間の皺は深くなるばかりだった。
「That's not the point.(論点はそこじゃない)」
彼の苛立ちが、通訳を介して痛いほど伝わってくる。誰もが固唾を飲んでいた、その時だった。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
会議室に入ってきたのは、派遣社員の楓だった。彼女が静かにお茶を配り始めた瞬間、それまで腕を組んで不機嫌そうにしていたジェームス氏が、突然目を見開いた。
「…Kaede? Oh my god, is that really you?(カエデ…?信じられない、本当に君なのか?)」
流暢すぎる英語に、会議室にいた全員が楓に注目する。
楓は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに懐かしい友人に会ったように自然な笑みを浮かべた。
「James! What a surprise. What are you doing here?(ジェームス!驚いたわ。ここで何をしているの?)」
二人は、まるで同窓会のように英語で会話を弾ませ始めた。唖然とする役員たちを前に、ジェームス氏が信じられないといった様子で叫ぶ。
「まさか、ハーバードでいつもトップだった君が、シリコンバレーを震撼させた伝説のIT企業『Genesis』の元CEOが、ここでお茶を淹れているなんて!冗談だろ?」
CEO――その言葉に、会議室は水を打ったように静まり返った。
楓はジェームス氏の口を慌てて手で塞ぎ、「それは昔の話よ」と苦笑する。そして、彼と宗田側の間に立つと、両者の意図を完璧に汲み取り、数分で交渉をまとめてしまった。
「君が保証するなら、この契約にサインしよう」
ジェームス氏は、先程までの不機嫌さが嘘のように上機嫌で契約書にサインをした。