彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

驚いて秋太を見たトワ。

「いい加減にしろ!そんなに文句があるなら、自分だけお手伝いに作ってもらうか。配食サービスでも頼め!」
「秋太…なんてこと言うの?私は、本当のことを言っただけよ」
「僕も本当のことを言っただけだ。…もういい…」

秋太は楓の傍に歩み寄ると、ギュッと手を握った。
「…いつもありがとう。美味しいご飯を作ってくれて。感謝しているよ…行こう…」

秋太は楓を連れてリビングから出ていいた。

「大嫌い!お母さんをいじめるな!」
柊がそう言って、秋太と楓の後を追った。

翔太は黙って箸をおいた。
「…今のはトワが悪い。…ちゃんと、楓さんに謝るんだ」
「どうして?本当のことを言っただけじゃない…」
「この煮魚の味。お手伝いさんが作っていた味付けと、同じだと思う」
「え?」
「楓さん。やめたお手伝いさんに、食事に味付けのことを聞いているようだよ。どんな味付けをしていたのか、メニューもどうしていたのか。それを聞いて、自分なりにアレンジしているようだ。私は、お手伝いさんが作っていた食事より。楓さんが作る食事のほうが、栄養バランスも整っていると思う」
トワは黙って何も言えなくなった。

「トワ…。秋太が心から愛した人を、認められないかもしれない。…でもな、時代の流れにより人も変わるんだよ。これからの時代は、彼女のような人が必要だと私は思っている。ああ見えても、彼女はハーバードを首席で卒業しているんだよ」
「え?」
「アメリカでは大手企業のCEOだった。だが、その地位を捨てて日本に帰ってきた。そして、秋太に出会ったんだ。7年前に、濡れ衣を着せられて姿を消した。でも、我が社を救うために戻ってきてくれた。私は、感謝しかない。…」

俯いてしまいトワは黙ってしまった。

「トワ。秋太が養子に行った本当の理由を、知っているか?」
「…私が嫌いだからでしょう?」
「違うよ」
「だって、あの子は学校行事に来なくていいって言ったし。個人懇談には、あなたが来てくれって。運動会も、全部、私には絶対に来るなって言ってきたもの…」
「それはな。秋太が、トワのことを想ってそう言ったんだ」
「私のため?」

翔太は一息ついて語った。
兄から聞いた秋太の本音を。

秋太はトワがみんなに陰口を言われることは嫌だった。
保護者にも好奇な目で見られて後ろ指をさされていた。
遊学式に来たトワを指さして「あの人変な歩き方している」といった生徒がいた。そしてその生徒の保護者が「みっともない歩き方ね」と言っていた。ひそひそと、陰口を言う保護者の声が秋太の耳に届いた。その時、秋太はトワがみんなに悪口を言われることがとても嫌だった。それは、大切なお母さんの悪口を聞きたくない気持ちと、トワが傷つくことへの恐れが入り混じっていた。
だから「もう学校に来ないで!」と秋太は言った。
その本音を打ち明けたのは、秋太が祖父の家に養子に行く前日だった。兄にトワには絶対に言わないでといったそうだ。

祖父の家に養子に行って秋太は一度も宗田家に戻ってこなかった。
だが、時々、家の近くにいた秋太を兄と姉が目撃していた。
傍に行くと全速力ではして逃げてしまい見失うことばかりだった。

ある日、兄と姉が祖父の家に行った。
秋太はすぐに帰れと言ったが、兄がどうしても秋太の本心が知りたくて、ゆっくりと話をした。
なかなか本心を言わない秋太だったが、ポツリポツリと話してくれた。
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