罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

消えない気持ち

それから2週間経って僕と悠人、琉偉は近くのカフェでゆっくりとしていた。
「なるほどね〜。でもさ、蒼唯はそれでいいわけ?なにも諦めることなんて…」
僕は琉偉に黒羽さんとの会話などを伝えたんだ。
なんとなく、言っておく必要を感じたから。
ずっと心配されてたしね。
「うん、いいんだよ。だってもう、月海くんには友達としての感情しか残ってないし」
「じー。……はぁ〜。まあ、蒼唯がそれでいいんならいいけどさ」
疑うような目を向けてくる。
でも、僕は動じない。
ここで動揺を見せたら終わりだ。
この気持ちは早く捨てないとなんだから。
「卯月様、蒼唯様をあまり詮索(せんさく)しないでください。困っていますので」
「あー、ごめんごめん」
悠人にそう言われると琉偉はそんな感じで、軽く謝ってきた。
助かった…。
「あ、そうだ!なあ蒼唯、今から一緒に遊びに行こうぜ!!この前親父に水族館のチケット3枚もらったんだよねー。ちょうどよくね?」
「え、それって私もですか?」
「もちろんでしょ」
僕は少し考える。
たしかに水族館には行きたいし、悠人もいるなら安心かな。
そう思って返事をする。
「悠人が行くなら僕も行くよ」
「だってさー、悠人くん」
わざとらしい琉偉の呼び方にため息をつきながらも、うなずいてくれた。
「わかりましたよ。行きましょう」
その後悠人が車を出してくれて、みんなで水族館に向かった。
ーーーーー
「いやー、楽しかった!!まさか最前列あんなに濡れるとはな〜。悠人のおかげでマシだったけど」
最終時間のイルカのショーに出て、僕達は帰るところ。
イルカショーは1番人気なはずなのに、最前列が空いてるのが不思議だったけど…。
まさかあんなに濡れるからだとは思わない。
悠人がカッパを貸してくれて助かった。
「風邪をひかないよう、家に帰ったらシャワーを浴びてくださいね」
「おう」
琉偉はそう言って笑った。
僕も一応うなずいておく。
それから、悠人は車を出してくると言って駐車場へ行った。
今は琉偉とふたりきりだ。
「なあ、蒼唯」
「ん?なに?」
不意に話しかけられたので、僕はとっさに返事をする。
「月海くんへの気持ちを諦めたってことはさ、俺が蒼唯と付き合える可能性があるってことだよね?」
僕の手をとって、恋人つなぎをしてくる。
なんとも言えない甘い雰囲気に、僕は何も言えなかった。
「改めて好きだよ、蒼唯。俺と付き合わない?」
琉偉のことは嫌じゃない。
ずっと前から一緒にいて、僕を罪の子としても扱わずに仲良くしてくれる。
琉偉以上にいい人なんか現れないかもしれない。
「なーんて、嘘だ——」
「いいよ。付き合っても」
「…え?」
琉偉のありえないって顔が僕の瞳に映った。
僕はやわらかに笑った。
「僕はまだ琉偉に恋愛感情は抱いてないけど、意識してみる。それでいいなら」
「蒼唯…」
琉偉は真剣な表情で顔を近づけてきた。
きっとキスをするんだ。
僕はそうわかって、目を閉じた。
唇が重なる瞬間にも思い出したのは、月海くんの笑顔で。
僕はなんてひどいんだろう。
そうして、唇が重なった。
でも、何かがおかしい。
違和感を覚えた僕は、ゆっくりと目を開けた。
目の前にいたのはここにいるはずのない月海くんで、僕は彼とキスをしていた。
「っ…?!」
「蒼唯が卯月のことが好きでも、絶対渡せない」
そう言って月海くんは琉偉をにらんだ後、強引に僕の手を引っ張ってどこかへ歩き出したのだった。
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