罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

幸せだよ

その後僕達はホテル内を満喫した。
ビュッフェの料理はすごく美味しかったし、温泉も格別だった。
本当に特別なクリスマス。

そして、そんな楽しいクリスマスは後少しで終わってしまう。
僕は名残惜しく思いながらベッドに腰かけた。
月海くんも同じように僕の横に座った。

「あっという間だったなぁ、ここまで。いろいろあったよね、本当に」

「うん、そうだね」

月海くんの横顔を見つめながら、僕はあることを思い出していた。
五十嵐くんと最後に話していたこと。

『そういえばさ、会長。せっかくだから、陽翔がめっちゃ喜ぶこと教えてあげる』

『喜ぶこと?』

『うん。そうそう。それは…名前を呼ぶこと!』

『え。そんなことで…?』

『いやいや!これがめっちゃ嬉しくてさ。好きな人に名前呼ばれると、自分が特別みたいに感じるんだよ。ほら、ふたりって苗字呼びじゃん?だから恋人感もでるかな〜って』

『そういうものなの?経験があるの?』

『実は俺彼女いるから!だからこれ経験談!だから、騙されたと思ってやってみて!』

本当にそんなことで喜んでくれるのかはわからない。
でも、もしなにか少しでも返せるものがあるなら…。
僕は緊張しながらも、彼の名前を呼んだ。

「陽翔くん」

「っ…!?え、なに?」

驚いたように勢いよく僕の方を向いた。

「えっと…その、これからは陽翔くんって呼んでもいいかな?」

「全然いいっていうか、めっちゃ嬉しいけど…。でも、いきなりどうしたの?」

不思議そうに聞いてくる。
いきなりだったし、そりゃそうなるよね。

「五十嵐くんに言われたんだ。名前で呼んだら陽翔くんが喜ぶって。それに、もっと恋人として近づけたら…って」

そう言うとしばらく固まった後、月海くんは大きなため息をついた。

「はぁ…あのバカ…。でも、うん。間違ってないよ?俺ずっと名前で呼んでほしかったし。正直めっちゃ嬉しい」

「そ、そうなんだね。なら、よかった」

少しでも陽翔くんが嬉しいと感じたなら、よかった。
それから、陽翔くんは僕の頬に優しく触れて言った。

「俺も“蒼唯”って呼んでいい?」


息が、止まった。


自分が特別みたい。


まさにそんな感じだった。

「いい?」

僕はその言葉にハッとした。
それから、コクコクと首を縦に振った。

「もちろん!というか、呼んでほしい…です」

「っぷ。あはは。俺達なにやってんだろね。名前呼びの許可取り合うとかさ〜。でも、めっちゃ嬉しい」

「うん。僕も」

陽翔くんが僕の手を握って、指を絡めてくる。
僕も同じように握り返した。

「ねえ蒼唯、改めてだけどさ。俺今めっちゃ幸せだよ。いろんなことあって、もちろん大変なことも多かった。でも、最終的に俺の隣には蒼唯がいる。それってめちゃくちゃ幸せなことだなって」

その言葉に僕の胸が熱くなる。

「俺は蒼唯がいればなんでもできる気がする。だからさ、ずっと一緒にいようね。約束」

僕はゆっくりと頷いた。
ただただ嬉しい。
きっとこの感情は、陽翔くんに抱くのが最初で最後だろう。
彼以外に抱くはずのない感情。

「僕も。陽翔だから好きになったよ。僕をあの地獄から救ってくれた陽翔くんが大好き。だから、離れたりしない」

これくらいのことしか言えないけど。
高価なものは送れないけれど。
それでも、陽翔くんの隣にいたいから。

「ね、蒼唯。キスしていい?」

「っ…どうして聞くの…?」

「ん?聞きたかったから」

僕の答えを待つ間もなく、チュッとリップ音を立ててキスをしてきた。

「もう!」

「嫌だったの?」

「ち、違うけど…」

完全にわかってて言ってる。
僕はこんなにもドキドキして慣れないのに、陽翔くんはなんだか慣れてて余裕もありそう。

「蒼唯に触れたくて限界なだけ。いつも言ってるでしょ?俺、蒼唯に触れてないと死ぬから」

そう言って熱くなった顔に、何度もキスをする。
それから、僕の胸の辺りに手を置いた。

「めっちゃドキドキしてるね」

「っ…!?」

バレてしまった恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうだった。
こんな姿見られたくないのに。


——恥ずかしい。


「俺だからこうなってくれるんでしょ?めっちゃ嬉しい。ていうか、俺もちゃんとドキドキしてるよ」

陽翔くんの顔を見ると、頬がうっすら赤かった。
同じなんだとわかってホッとした。
これが僕達のペースなんだって。

「好き」

僕は抑えられなくなって、気持ちをぶつけて自分から唇を重ねた。
初めてのことで恥ずかしかったけど、陽翔くんも同じだと思えば平気だった。
それよりも、触れていたい。

「やばっ。それは理性とぶって」

そう言って、感情をぶつけるように深くキスをした。
何度目の口づけかわからない。

白雪姫を目覚めさせるのは王子様のキスだった。
僕達も同じ。
僕を幸せに導いてくれたのは、陽翔くんの口づけだったよ。


「大好きだよ蒼唯」


いつまでも、この幸せが続きますように。
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