私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
寝室に戻ると、部屋はいつものように柔らかな光に包まれていた。ランプの温かな光が、ベッドの白いシーツを優しく照らし、静かな空間を作り出している。
悠真はそっとベッドの脇に立ち、ブランケットを丁寧に整えてくれた。その動作は、いつも通り穏やかで、私を大切に思う気持ちが伝わってくるようだ。
私はベッドの端に腰かけ、彼の動きをじっと見つめる。昼間の出来事が、頭の中で何度も繰り返される。あの人影、悠真の素早い対応、そして彼の力強い背中――すべてが、私の心を揺さぶり続けていた。
「今日、怖い思いをさせてしまいましたね」
彼がベッドに腰を下ろし、そっと私の肩を抱き寄せた。その声は、いつものように優しく、だがどこか申し訳なさそうに響いた。私は慌てて首を振る。
「ううん……でも、あなたがいてくれたから……」
声が震え、頬を涙が伝う。昼間の不安、恐怖、そして悠真の頼もしさが、胸の中で混ざり合い、感情が溢れ出していた。
彼は私の涙に気づくと、そっと私の髪を撫で、額に優しく口づけをした。その感触は、まるで私の心の傷を癒すように温かい。
「これからも、必ず守ります。あなたを愛しています」
その言葉に、胸がいっぱいになった。政略婚だから――と何度も自分に言い聞かせ、愛される資格がないと否定してきた心が彼の言葉で一瞬にして溶けていく。
愛している。そのシンプルな言葉が、私の心の奥深くに響き、温もりを広げていく。私はただ、彼の腕の中で小さく頷くことしかできなかった。涙が止まらず、胸の奥で甘い熱が広がっていく。
理性では、政略婚という枠組みを思い出すのに、心は完全に彼に支配されていた。