私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜



 彼はそう言い、私を木の陰に隠れるように促した。目線は常に周囲を警戒し、鋭い視線が庭園の隅々を捉えている。
 私はただ、息をひそめて彼の背中を見つめた。心臓はまだ速く打ち、頭の中は不安と疑問でいっぱいだった。あの人影は、誰だったのだろう。なぜ、私たちを見ていたのだろう――。

 数分後、黒服の数人が庭園の奥から現れた。私の心臓が跳ね上がるのと同時に、悠真は瞬時に動いた。彼の動きは、まるで風のように素早く、冷静で的確だった。
 黒服の男たちに近づき、低い声で何か言葉を交わす。男たちの動きが止まり、やがて静かに庭園から去っていく。私は遠くからその光景を見ながら、息を止める。悠真の背中は、いつもより力強く、まるで盾のように私を守っているようだった。


 「もう大丈夫です」


 悠真が振り返り、いつもの穏やかな微笑みを浮かべた。だが、その背中の筋肉にはまだ緊張が残り、普段の柔らかな雰囲気とのギャップに、私は心を奪われた。
 彼はこんなときでも、私を守るために動ける人だった。いつも優しく、過保護ともいえる彼が、こんなにも頼もしい姿を見せるなんて――胸の奥で、尊敬と愛情が混ざり合うような感情が湧き上がる。


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