私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
第5章:正体の告白



 夜の屋敷は、静寂に包まれていた。窓の外には、柔らかな月光が銀色のベールのように差し込み、部屋の隅々を優しく照らしていた。
 ランプの温かな光と月光が交錯し、ベッドの白いシーツに淡い影を落としている。私はベッドの端に座り、膝を抱えて窓の外を眺めていた。庭園の木々が風に揺れ、遠くでかすかに聞こえる虫の音が、夜の静けさを一層深く感じさせる。


 「遥さん、少し話をしましょう」


 悠真の声が、静かな部屋にそっと響いた。振り返ると、彼はドアのそばに立ち、私をじっと見つめていた。いつも通りの穏やかな微笑み、知的な瞳に宿る優しい光――だが、その奥には、どこか真剣な色が浮かんでいる。

 私は思わず息を呑み、胸の奥で期待と不安が混ざり合うのを感じた。何を話すつもりなのだろう。

 昼間の庭園での出来事、彼の頼もしい姿が頭をよぎる。あの事件以来、私の心は彼への想いと、知らない彼の一面への好奇心で揺れ動いていた。



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