愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
第1章 冷徹な婚約と屈辱の初夜
それはある日突然の王命だった。
「ヴァレンティーナ公爵令嬢・イリス。そなたに皇太子・ラファエルとの婚儀を申し渡す。」
その言葉を耳にした瞬間、私は息を呑み、思わず目を丸くしてしまった。
婚儀――それは王族と貴族を結ぶ重大な命令。
だが私は、これまで一度たりともラファエル皇太子と顔を合わせたことがなかったのだ。
遠くからその存在を仰ぎ見たことすらない相手。
冷徹な皇太子と呼ばれていることだけは噂で知っていたけれど、まさか自分がその妻に指名されるなど夢にも思っていなかった。
だからこそ、胸に浮かんだのは歓びよりも「なぜ私が?」という疑問だった。
宮廷には社交に慣れた伯爵令嬢や侯爵家の娘たちが大勢いる。
顔すら知らぬ私を、なぜ選んだのか――答えは与えられないまま、婚儀は決定事項として告げられた。
けれどもヴァレンティーナ公爵家は違った。
王命こそ一族の誇りとばかりに、家中はお祝いの空気に包まれていく。
両親も親族も「これで我が家はさらに栄える」と浮き立ち、使用人たちまで祝宴の準備に追われていた。
困惑する私をよそに、屋敷は婚礼の華やぎに染まっていくのだった。
「ヴァレンティーナ公爵令嬢・イリス。そなたに皇太子・ラファエルとの婚儀を申し渡す。」
その言葉を耳にした瞬間、私は息を呑み、思わず目を丸くしてしまった。
婚儀――それは王族と貴族を結ぶ重大な命令。
だが私は、これまで一度たりともラファエル皇太子と顔を合わせたことがなかったのだ。
遠くからその存在を仰ぎ見たことすらない相手。
冷徹な皇太子と呼ばれていることだけは噂で知っていたけれど、まさか自分がその妻に指名されるなど夢にも思っていなかった。
だからこそ、胸に浮かんだのは歓びよりも「なぜ私が?」という疑問だった。
宮廷には社交に慣れた伯爵令嬢や侯爵家の娘たちが大勢いる。
顔すら知らぬ私を、なぜ選んだのか――答えは与えられないまま、婚儀は決定事項として告げられた。
けれどもヴァレンティーナ公爵家は違った。
王命こそ一族の誇りとばかりに、家中はお祝いの空気に包まれていく。
両親も親族も「これで我が家はさらに栄える」と浮き立ち、使用人たちまで祝宴の準備に追われていた。
困惑する私をよそに、屋敷は婚礼の華やぎに染まっていくのだった。
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