推しのマネージャー(※ほんとは護衛)になりました。 ~アイドルたちの溺愛がとまりません!~

第四話 人魚姫の伝説



「君、この学園の生徒やったんやな! すっごい偶然やなぁ」

「い、いえ。わたし、今日この学園に転校してきたんです」

「そうなん? なぁ、名前、聞いてもええ?」

「な、名前ですか!? こ、小戸森紗南、です」

「紗南ちゃんかぁ。かわええ名前やな」

「かっ、かわ……」


――どうしよう。推しに可愛いって、名前をほめられちゃったよ! お父さんお母さん、この名前をつけてくれて、本当にありがとう……!

感動で胸がいっぱいになって、何だか泣きそうになってきた。
推しにかけてもらった言葉一つ一つを噛みしめていれば、ステージに立っている有栖さんが「星穏、行くよ~」と呼ぶ声が聞こえてくる。


「お、もう行かな。そんじゃあ紗南ちゃん! 学園生活、めいいっぱい楽しんでな」

「は、はい。ありがとうございま、す……」


わたしは、そこで、あることに気づいて固まってしまった。


(し、星穏さんの肩に、悪鬼がのってる……?)


小さい手のひらサイズの鬼だ。そこまで害はないんだけど、近くにいられると、何となく身体のだるさを感じちゃうんだよね。
わたしが固まっている間に、星穏さんは手を振って行ってしまう。


(わ、行っちゃう……! あ、そうだ!)


わたしは心の中で、式神のコンブに呼びかけた。

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