反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 帰り道。
 夕暮れの空がオレンジ色に染まり始めていた。
 海の匂いがまだ少しだけ残っている。
 沈みかけた太陽を見ながら、夏樹がぼそっと呟いた。

「……また来ような」
 その声はいつもより静かで、優しかった。

 小春は笑顔で頷いた。
「うん、約束だよ」

 そのとき、二人の手が自然と触れ合い、離れなくなった。
 冷たい風の中、指先の温もりだけが確かに残っていた。

 ――あのときの私は、ただ幸せで。
 夏樹のことを、もっともっと好きになっていくばかりだった。
 こんな日々が、ずっと続くなんて。
 どうしてあのとき、疑いもしなかったんだろう――。
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