反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 どうしてこうなった?

 私は今、夏樹にご飯に誘われて、ファミレスに来たところだった。
 なのに――夏樹の隣には、なぜか亜美が座っている。

「……え、なんでが高松さんがいるの?」
 思わず声が上ずる。

 夏樹はスプーンを手にしたまま、少しだけ気まずそうに頭をかいた。
「いや、その……飯、一緒に食べようと思って。高松がまだ残ってたから、ついでに誘った」

「ついでって……」
 言葉の語尾が少し震えた。

 対面の亜美は、明るい笑顔を浮かべながらも、どこか居心地悪そうに視線を泳がせていた。
「すみません、私も先輩に誘ってもらって……。まさか桜田先輩も来るなんて思わなくて」

 ――“まさか”って何。
 胸の奥がじんわりと熱くなる。

 夏樹はフォローするように、落ち着いた声で言った。
「別に変な意味じゃねぇよ。ただ、高松も一人で飯食うの寂しいだろって思っただけ」

「……ふぅん」
 わかってる。夏樹は優しい。放っておけないだけだって。
 でも――それが、今は苦しかった。

「そっか。優しいんだね、なつくん」
 無理やり笑ってみせると、亜美が少し嬉しそうに夏樹の方を見た。

「夏樹先輩、亜美にいつも優しいんです」
 その視線が、言葉が、また私の胸をざわつかせる。

――本当は、夏樹の隣に座るの、私だったはずなのに。

 小さくスプーンを握る手に力が入る。
 テーブルの上のコップの水面が、静かに揺れた。
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