反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
 廊下の暗闇を、手をぎゅっと握り合いながら歩く。
 雨音と雷鳴はまだ遠くで響いているけれど、心の中の嵐は落ち着き、ただ夏樹の存在に安心していた。

 部屋の明かりが見えてくると、自然と手を離せなくなる。
 その瞬間、扉の前で誰かの声がした。

「小春、大丈夫だった?」
 秋だった。眉を少し寄せ、私の顔を心配そうに覗き込む。

「うん、大丈夫」
 でも、手はまだ夏樹と繋いだまま。
 秋はそれを見て、少し微笑んだように見えた。

 凛も扉のそばにいて、にこにこと笑っている。
「二人とも、手つないでる!やっと仲直りしたんだね」

 私は少し照れくさくなりながらも、夏樹の手をしっかり握り返す。
 その手の温もりが、今は何よりも安心で、心強かった。

「色々心配かけてごめんね。本当にありがとう」
 そう言うと、秋と凛は優しく笑って返してくれた。

凛がぱっと目を見開いて、にこっと笑いながら言った。

「ちょっと待って、信じていいんだよね?今度小春のこと泣かせたら、私がぶん殴ってやるから!」

凛は冗談めかして拳を振り上げたが、その目は本気で真っ直ぐだ。

夏樹は思わず顔を引きつらせて、慌てて小さく頭を下げる。
「……ご、ごめん。もう二度と、そんなことしないから」

凛は満足げにふん、と鼻を鳴らしてから、ぷいっと部屋の中へ戻る仕草をする。

小春は頬を赤らめながらも、思わず吹き出してしまう。

秋は少し笑いながら肩をすくめる。
「夏樹くんは凛に殴られた方がいいよ。まぁ、僕は殴ったこと、謝らないからね?」

明かりが戻り、和やかな笑い声が広がる中で、私たちは自然と輪に溶け込んでいった。

「ありがとう。でも、もう大丈夫」

そう言って小春は、夏樹の手をぎゅっと強く握った。

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