反抗期の七瀬くんに溺愛される方法
夏樹は、廊下でくしゃみを大きくひとつした。

「……はっくしょん!」

思わず小春がびっくりして、手を口元に当てる。

「大変!なつくん、そういえばびちょびちょだよ!風ひいちゃうじゃん。早く温泉入って、あったまってきて!」

夏樹は少し照れたように顔を背けながらも、にやりと笑う。

「……じゃあ、一緒に入る?」

「え!?」

小春が思わず大声をあげると、夏樹はすぐに手を上げて、「ごめん、ごめん、うそだよ」と照れ隠し。

でも、すぐに真剣な表情に戻り、懐に手をやりながら小さく言った。

「小春は……俺のお姫様でしょ?忘れてねぇからな」

その言葉に、胸がじんわり熱くなる。
雨で濡れた体も、雷も、嵐も――全部どうでもよくなるくらい、夏樹の声と存在が心に染み渡った。

小春は思わず、夏樹に抱きついた。

「……覚えてくれてたんだね」

廊下に残る雨音をよそに、二人だけの世界がゆっくりと落ち着きを取り戻していく。

「おい、小春も濡れるぞ……ってなんでそんな顔してんだよ」
「だって、なつくん……恥ずかしそうに言うんだもん!」

夏樹は少し顔を赤くしながらも、くすっと笑う。
「うるせぇな……照れてねぇよ」

小春は手を胸に当てて笑いながら、ぶつぶつと文句を言う。
「照れてるくせに!ほら、心臓早い!」

「……お、おい、やめろよ」

「もうお姫様に冷たくしちゃだめだよ!」

小春は小さく突っつきながらも、しっかり腕を絡めてくっつく。
その距離感が、二人にとって自然で、心地よかった。
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