もしも、あっちの部活を選んだら?

バドミントンの天才

よし、またスマッシュが決まった。

バドミントン部内での練習試合。また先輩に勝ってしまった。

自分でもびっくりするくらい、体が自由に動く。
むしろ頭で考えるよりも先に体が反応しちゃうって感じ。

「竹口さんはバドミントン部エースだね」

部長の東先輩にエースなんて言われて、悪い気はしない。

最初はバドミントンの天才とか言われてもピンとこなかったけど、最近では自分の実力を少しずつわかってきた。
私、バドミントンがめちゃくちゃ向いているんだ。

「お、天才の真澄選手じゃないですか」

爽やかな笑顔を浮かべたコウが声をかけてきた。

「やめてよ、そんな言い方するの」

「またまた、自分でも思っているくせに」

嘘をつくのも嫌で、曖昧な笑みを浮かべた。

そう言うコウも男子バドミントンの中では期待の新人だ。

私ほどの天才ってわけじゃないけど、一年生の中では明らかに実力が一番上だ。
練習にも一生懸命だから東先輩にもすごく好かれている。

私とコウは二人揃って一年のエースって呼ばれているんだよね。

「スポーツってうまくできるとすごく楽しんだね」

今までスポーツが苦手だった。
何をやってもうまくいかなくて、中学で部活に入っても上手くできないんじゃないかと心配だった。

でも今の私にそんな心配はいらない。

バドミントンが楽しくて楽しくて仕方がない。
試合をすれば勝てる。周りの人が私を褒めてくれる。
天才って言われて、学校中の生徒が私に注目してくれている。

こんなのまるで夢みたい。

「コウはこんな気分をずっと味わっていたのか」

「今の真澄に比べたら俺はそうでもねーよ。天才なんて言われたことないから」

この部活で私よりも強い人は誰もいない。

大会に出たら全市大会で優勝どころか、全国大会にも行けっちゃったりして?
全国優勝なんてこともあるかも。

そしていずれはバドミントンでオリンピックの金メダルを取れちゃったりして……。

「何だよ、その笑顔は」

「別にー? 何でもないよーだ」

いけない。思わず変な笑いを浮かべちゃってたよ。

もし、私が大会で優勝したら。
隣の表彰台にコウが立っていたらいいな。

私とコウの二人が優勝する。

腐れ縁なんだからそういうこともあるかもしれないよね。

「おい、そこの一年二人。練習中なんだから喋ってないで練習しなさい」

二年の先輩が私とコウに向かって注意をした。

あの先輩、さっき私と試合形式の練習して私に負けたんだよね。
バドミントンの実力なら、私の方が上なのに。

「別に私たち強いんだから、ちょっとくらい話てもいいじゃんね?」

コウは何とも言えない表情を浮かべると、「ま、とりあえず練習するか」と言った。

部活中なんだから練習するのはわかるけどさ。

私より弱い先輩に練習をサボったことを怒られたのがいまいち納得できなかった。
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