もしも、あっちの部活を選んだら?
「ごめん、先に行って。私も次の電車で行くから」

そう言うと、二人は慌てて電車のプラットホームに向かって駆けていった。

はあ。もう、最悪なんですけど……。

のろのろと立ち上がり、ICカードをかざして改札を通ると電車の発車する音が聞こえた。
あーあ、私一人、置いてかれちゃったよ……。

ま、私一人が遅れても部活としては困らないだろうけどね。

ボールだって少なくなるけど、全部がないわけじゃないし。
だから、みんなに迷惑かけるけど、きっと何とかなる。

それなら、ま、いいか。

なんてことを考えて自分を安心させるけど、逆に寂しくなってきちゃった。

私がいなくても部活は何ともないんだよね。

それってこの部活に私はいらないって言われているような気分だよ。

私はバスケも上手くないし、後輩たちに尊敬される先輩でもないけど。
それでもバスケをやってみようと思って入部したのに。

こんなのあんまりだよ……。

次の電車が来るまで十分以上はある。
これといってやることもないせいか、ついつい入部した時のことを思い出した。

中学校に入学したときはバスケ部に入るって決めてたわけじゃなかったんだよね。

バスケも気になってたけど、テニスとかバドミントンも気になってた。
色々な部活を見学して、最後の決め手は美優がバスケ部にいたから。

美優が一緒にバスケをやろうって誘ってくれたから、バスケ部に決めたんだよね。

美優は経験者だからバスケが上手いけど、私は全然向いてなかった。

もしも、あの瞬間に戻れたら。
入る部活を決める瞬間に戻れたら。

バスケ部なんて選ばないのにな。

他の部活に入ってたら今とは違う中学校生活を送れていたのかな。
なんて、そんなことあるわけないのにさ。

そうこうしているうちに電車がやってきた。

ラッキー、ちょうど席が空いているじゃん。

ボールが重たいから立っているのきついなーと思ってたけど、車内は思ったよりもスカスカしてて、座ってボールを置いても誰の迷惑にならなそうだ。

「間もなく電車が出発いたします」

アナウンスが聞こえて、電車が動き出す。
ガタンゴトンと心地良いリズムで車内が揺れる。
まるでゆりかごの中で揺さぶられている気分。

全力ダッシュしたり、重いボールを背負って疲れたせいか、うとうとと眠気が襲ってきた。

目的地までここから五駅。少しくらい寝ても大丈夫だよね。

こくん、こくんと頭を動かしているうちに、いつの間にか意識が飛んでしまった……。

そして、目が覚めると。

「真澄、中学校でも同じクラスになれたね!」

制服姿の美優が目の前にいた。
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