もしも、あっちの部活を選んだら?
天才の不満
六月も中旬になった。大会まであと二週間。
土曜日の朝。今日も八時に体育館集合で、昼過ぎまでバドミントンの練習だ。
さてと、今日も部活を頑張りますか。
と言いたいところだけど。
なんかやる気が出てこないんだよな。
大会に出るのはすごく楽しみ。
私が出るのは、もちろん個人のシングルス。
学校ごとに出場者の制限がないから一年生も全員出れるんだよね。
予選を突破すれば全市大会があり、その先には全国大会が待っている。
考えるだけでいニヤけてきちゃう。
大会になれば学年は関係ない。だけど私は先輩たちにだって負けない実力がある。
そう思ったら、部活を一生懸命頑張る必要あるのかなって思っちゃうよね。
走り込みや体力トレーニングをして、部員たちと基礎練をする。
私には必要のないことばかり。
そんなことよりも私はもっと試合形式の練習をしたい。
「竹口さん、動き遅いよ」
そんなことを考えていたからか、アップのランニング中に東先輩に怒られてしまった。
東先輩が怒るなんて珍しい。
けど、そんなことでいちいち怒らないでほしいとも思う。
ただでさえ面倒な練習に出ているのに、ランニングなんかで注意されたらたまったもんじゃないよ。
「ねえ、あれくらいで怒るなんてひどくない?」
休憩時間にさっき怒られたことをコウに愚痴る。
コウならきっと私の味方をしてくれる。そう思ったのに。
「真澄があまりにもだるそうに走ってたからな」
コウからの予想外の返答にびっくりした。
「嘘、私そんなにだるそうだった?」
「ランニングもそうだけど、最近の真澄、練習が適当に見える」
今日のコウは珍しくズケズケと思ったことを言ってくる。
心当たりがあるだけに一言一言が痛いくらいに私の胸に突き刺さる。
「でもさ、私はバドミントンが強いんだから少しくらい大目に見てもよくない?」
そう言った瞬間、コウが右手の人差し指を立てて自分の口に当てた。
「あんまり、そういうの言わない方がいいぞ」
ちらっと当たりを見渡す。水を飲んだり、友達と話したり私の方を気にしている人はいなかった。
「どうしたの? 誰も私たちのこと気にしてないよ」
「わかってねーな。みんなわざと聞こえないふりをしているんだよ」
コウの声がいつもよりも真剣味を帯びて聞こえる。
「こういうのあんまり言いたくないけど、最近の真澄ちょっと変だぞ」
変? 私が?
コウの言っている意味が全然わからずぽかんとしてしまう。
「変ってどういうこと」
「バドミントンが強いことにかまけて、練習のやる気がないというか。あんまり練習態度がいいとは思えないぞ」
コウが私にそんなことを思っていたなんて知らなかった。
「これを思っているのは俺だけじゃない。みんな薄々思っている。そういうの少し気をつけた方がいいぞ」
休憩時間の終わりを告げるブザーの音が体育館に鳴り響く。
コウはすぐにオンとオフの切り替えをすると、足早に移動をした。
体育館を駆けるコウの背中がだんだんと小さくなっていく。
何よ、コウまでそんなこと言う必要ないじゃない。
コウだけはいつも私の味方でいてくれると思ったのに。
……きっと、コウも私の強さに嫉妬しているんだ。
私がコウより強くなったのって初めてだもん。そうに違いない。
土曜日の朝。今日も八時に体育館集合で、昼過ぎまでバドミントンの練習だ。
さてと、今日も部活を頑張りますか。
と言いたいところだけど。
なんかやる気が出てこないんだよな。
大会に出るのはすごく楽しみ。
私が出るのは、もちろん個人のシングルス。
学校ごとに出場者の制限がないから一年生も全員出れるんだよね。
予選を突破すれば全市大会があり、その先には全国大会が待っている。
考えるだけでいニヤけてきちゃう。
大会になれば学年は関係ない。だけど私は先輩たちにだって負けない実力がある。
そう思ったら、部活を一生懸命頑張る必要あるのかなって思っちゃうよね。
走り込みや体力トレーニングをして、部員たちと基礎練をする。
私には必要のないことばかり。
そんなことよりも私はもっと試合形式の練習をしたい。
「竹口さん、動き遅いよ」
そんなことを考えていたからか、アップのランニング中に東先輩に怒られてしまった。
東先輩が怒るなんて珍しい。
けど、そんなことでいちいち怒らないでほしいとも思う。
ただでさえ面倒な練習に出ているのに、ランニングなんかで注意されたらたまったもんじゃないよ。
「ねえ、あれくらいで怒るなんてひどくない?」
休憩時間にさっき怒られたことをコウに愚痴る。
コウならきっと私の味方をしてくれる。そう思ったのに。
「真澄があまりにもだるそうに走ってたからな」
コウからの予想外の返答にびっくりした。
「嘘、私そんなにだるそうだった?」
「ランニングもそうだけど、最近の真澄、練習が適当に見える」
今日のコウは珍しくズケズケと思ったことを言ってくる。
心当たりがあるだけに一言一言が痛いくらいに私の胸に突き刺さる。
「でもさ、私はバドミントンが強いんだから少しくらい大目に見てもよくない?」
そう言った瞬間、コウが右手の人差し指を立てて自分の口に当てた。
「あんまり、そういうの言わない方がいいぞ」
ちらっと当たりを見渡す。水を飲んだり、友達と話したり私の方を気にしている人はいなかった。
「どうしたの? 誰も私たちのこと気にしてないよ」
「わかってねーな。みんなわざと聞こえないふりをしているんだよ」
コウの声がいつもよりも真剣味を帯びて聞こえる。
「こういうのあんまり言いたくないけど、最近の真澄ちょっと変だぞ」
変? 私が?
コウの言っている意味が全然わからずぽかんとしてしまう。
「変ってどういうこと」
「バドミントンが強いことにかまけて、練習のやる気がないというか。あんまり練習態度がいいとは思えないぞ」
コウが私にそんなことを思っていたなんて知らなかった。
「これを思っているのは俺だけじゃない。みんな薄々思っている。そういうの少し気をつけた方がいいぞ」
休憩時間の終わりを告げるブザーの音が体育館に鳴り響く。
コウはすぐにオンとオフの切り替えをすると、足早に移動をした。
体育館を駆けるコウの背中がだんだんと小さくなっていく。
何よ、コウまでそんなこと言う必要ないじゃない。
コウだけはいつも私の味方でいてくれると思ったのに。
……きっと、コウも私の強さに嫉妬しているんだ。
私がコウより強くなったのって初めてだもん。そうに違いない。