壁の中の彼氏
 確かめてみる必要がある。

☆☆☆

 家に帰ってきた亜美はすぐに自室へ向かってベッドに腰をかけた。
壁に耳をピッタリとくっつけて中の様子を伺うけれど、物音も呼吸音も聞こえてこない。
 そこにあるのはただの無機質な壁だった。
「ただいま。今帰ってきたよ」
 その言葉にも返事はなかった。
 男はまだ怒っているのか、それとももうどこかへ行ってしまったのか。
 そう考えると焦燥感が生まれる。
 どうか、まだどこにも行っていませんように。
 もう少しでなにかがわかるかもしれないのだから。
「今日ね文芸部の友達と将来の話しになったの。進学先とかそういうの」
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