壁の中の彼氏
 中学三年生だから、こういう話題が出ても不思議じゃないはずだ。
「私はこの街の普通科高校に進学して、その後は飛谷大学に行こうと思ってる。知ってる? その大学には文学部があって、小説家を目指してる人が沢山いるんだって」
 亜美が大学名を出した瞬間、壁の中からコトリと物音が聞こえてきた。
「ねぇ、聞こえてる?」
「……聞こえてるよ。その大学も聞いたことがある」
 久しぶりの反応に亜美は嬉しくなって頬が緩んだ。
「あなたも行ってみたかった? それとも、行ってた?」
「どうだったかな……。でも、知っている場所だと思う。今大学名を聞いたときにキャンパスの光景が浮かんできた」
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