壁の中の彼氏
 周りにいるのは近所の人数人と、お坊さんだけだった。
 決して人付き合いが広いタイプじゃなかったし、互いに駆け落ち同然で結婚したから親戚とも縁がなかった。
 俺は幼い頃から親戚というものを知らずに育ってきた。
 別に、それが悲しいことだとは思わなかった。
 自分にとっては当然のことだったから。
 次に思い出したのは大学生活のことだった。
 両親に先立たれた俺はこのまま大学をやめて仕事を探す決断をしないといけない状況になっていた。
 将来は小説家になりたいと夢見て入学した大学だから、やめるのはそう簡単なことではなかった。
 そこで、もう少しあらがってみようと思ったのだ。
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