壁の中の彼氏
 このときようやく自分が三ヶ月間なにを運んできたのか理解した。
 俺は人間の臓器を運んでいたのだ。
 こんな風に運ぶということは、合法ではないに決まっている。
 リスクを承知でバイトを始めたとわかっていたけれど、まさか臓器売買に手を貸してしまっていたなんて……。
 それから俺は夢中になって箱の中に発泡スチロールを戻し、ガムテープで蓋を閉めた。
 俺はなにも見てない。俺はなにも知らない。
 自分自身に言い聞かせながら仕事を続けたが、それもうまくはいかなかった。
 大学で唯一の友人である橋田にこのことを 少しだけ相談すると、ちゃんと話を聞いてくれることになった。
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